AI を全員に配っても楽にならない — 京都府庁が足した 2 つ目の道具

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京都府庁は対話型の AI「Copilot Chat」を全庁に入れた後、庁内マニュアルを探す別の AI を足し、2 つの道具を使い分けています。

AI を全社に配ったのに現場が楽にならない会社にとって、「業務ごとに道具を選ぶ」という次の一手の見本になります。

30 秒でわかるポイント

  • 2025 年 1 月に Copilot Chat、4 月にマニュアル検索用の ChatAI を全庁導入
  • 利用率は Copilot Chat が 71%、ChatAI が 45%。用途で使い分ける
  • ChatAI を使う職員の 84% が「問い合わせが減った」と回答

1 分でわかる解説

府庁の事務では、会計や文書のルールを手引きで確かめる作業が重荷でした。見つからなければ、ルールを所管する課に問い合わせて回答を待つしかありません。

当時の Copilot Chat は、手元の資料を読み込んで答える仕組み(RAG)が十分ではありませんでした。そこで、この仕組みを備えた別の AI を足し、得意分野で分けました。

道具 主な用途 利用率 1 人あたりの年間削減見込み
Copilot Chat 文章の作成、企画のアイデア出し 71% 109 時間
ユーザーローカル ChatAI 庁内マニュアルの検索 45% 74.4 時間

ここから考えたい 3 つの問い

  • あなたの職場で、AI を入れたのに楽になっていない作業はどれですか?
  • その作業は「文章をつくる」と「社内の決まりを探す」のどちらに近いですか?
  • AI の答えを最後に確かめる人は、業務ごとに決まっていますか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの? — 京都府庁が「1 つに絞らない」と決めた

京都府の人口は、2005 年の約 265 万人から 2025 年には約 250 万人に減りました。府庁は将来の人手不足を見据え、職員約 7,000〜8,000 人の業務効率化に取り組んでいます。

着目したのが生成 AI です。府庁は 2025 年 1 月に、対話型の AI「Copilot Chat」を全庁に導入しました。

しかし、対話型の AI を全庁に入れただけでは、現場の負担は解消し切れませんでした。そこで 2025 年 4 月、庁内マニュアルの検索に強い「ユーザーローカル ChatAI」(以下、ChatAI)も全庁に導入しました。

2 つのツールは一本化していません。マニュアルの検索には ChatAI、文章の作成や企画のアイデア出しには Copilot Chat と、得意分野で使い分けています。

なぜ 1 つの AI では足りなかったの?

負担になっていたのは、会計や文書の事務で庁内ルールを確かめる作業です。手引きをめくって情報を探し、見つからなければ制度を所管する課に問い合わせて回答を待つ必要がありました。

定型作業を自動化するソフト(RPA)も選択肢でした。ただ、構築や運用に専門知識が要り、全職員が日常的に使うにはハードルがありました。

当時の Copilot Chat は、手元の資料を読み込んで答える仕組み(RAG)が十分ではなく、膨大な手引きを読ませて使うのは難しかったそうです。RAG は、AI が答える前に指定の資料を調べ、その中身をもとに答える仕組みです。

置き場所は、庁内のサーバーで運用する案も検討しました。しかし更新や保守の負担が大きく、費用対効果にも課題があると判断し、AI の進化を取り込めるクラウドを選びました。

現場の仕事はどう変わったの?

庁内調査では、Copilot Chat の利用率は 71%、ChatAI は 45% でした。満足度は Copilot Chat が 95%、ChatAI が 93% です。継続して使いたい職員は、どちらも 99% に達しています。

週 1 日以上使う職員 1 人あたりの年間削減時間は、Copilot Chat で 109 時間、ChatAI で 74.4 時間と見込んでいます。ChatAI を使う職員の 84% が「制度所管課への問い合わせが減った」と答えました。

これまで これから
手引きをめくってルールを探す ChatAI に聞いて該当箇所を探す
見つからなければ担当課に問い合わせて待つ 問い合わせが減り、待ち時間も減る
文章や企画を一から考える Copilot Chat で下書きやアイデアを出す

府庁は次の段階として、複数の作業を自分で順に進める AI(AI エージェント)も試しています。請求書の受け付け審査や、補助金申請の書類の一次チェックを支える狙いです。

開発には、プログラミングの専門知識がなくても作れる「Copilot Studio」を使いました。最初は、ルールの読み取りから書類のチェック、結果の整理までを 1 つに任せたところ、精度が大きく落ち、エラーも頻発したそうです。

そこで「ルールを読み取る」「書類をチェックする」「結果を整理する」の 3 つの子エージェントを用意し、親エージェントが取りまとめる形にしました。たとえるなら、1 人に全部を頼むのをやめ、係を分けて班長がまとめる形です。これで処理が安定しました。

AI の答えはあくまで「一次案」で、最終判断は職員が行うルールを徹底しています。AI エージェントは今も検証段階で、今後は需要の高い審査業務などに広げることを視野に入れています。

SYNCON の視点 — 「全員に配った」はゴールではない

京都府庁の判断で大事なのは、AI を配ったあとに「どの作業が楽になっていないか」を見て、その作業に合う道具を足した点です。対話型の AI が得意なのは文章づくりで、社内の決まりを正確に探す作業は別の仕組みが向いていました。

AI を全社に入れても効果が見えない会社は、まず負担の大きい作業を名指しで挙げることから始められます。そのうえで、今の道具がその作業に向いているかを確かめます。向いていなければ、1 つの道具に寄せる前提を外して考えます。

もう 1 つの学びは、仕事を分けると AI が安定するという点です。審査のような手順の決まった業務は、工程ごとに分けて任せ、最後は人が判断する。この線引きを先に決めておくと、導入の範囲を広げやすくなります。

要点まとめ

  • 京都府庁は職員約 7,000〜8,000 人の業務効率化のため、生成 AI を導入
  • Copilot Chat に加え、マニュアル検索用の ChatAI を足して使い分けた
  • 利用率は 71% と 45%、満足度は 95% と 93%
  • ChatAI を使う職員の 84% が、担当課への問い合わせが減ったと回答
  • 審査を支える AI エージェントは、3 つの子エージェントに分けて安定させた
  • AI の答えは「一次案」で、最終判断は職員が行う

情報ソース:
・キーマンズネット「京都府庁、職員7000人の事務効率化で『Copilotだけに頼らない』と決めた理由」(2026 年 10 月 27 日)

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