AI で出張見積もり月 100 時間減 — HIS は対象を絞って精度の壁を越えた

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旅行会社の HIS が、法人出張の見積もりメールを AI で作る仕組みを動かし、月 100 時間の作業を減らしました。2023 年ごろから試しては精度が足りずに止まっていた取り組みです。

転機は、AI を賢くしたことではありません。AI に任せる仕事を「単純な往復」に絞り、最後の判断を人に残したことです。

30 秒でわかるポイント

  • HIS は UiPath の AI とロボットで、出張見積もりのメールを自動で作成
  • 対象 1,000 件のうち約 400 件が、人の手直しなしで送れるように
  • 出張の 6 割を占める「単純往復」に絞ったことが、精度の壁を越えた鍵

1 分でわかる解説

依頼メールは、顧客企業や担当者ごとに書き方がばらばらです。これを満足な精度で読み取れず、従来の AI では目指す性能が出ませんでした。

そこで HIS は、仕事を全部 AI に渡すのをやめました。決まった形に乗りやすい案件だけを AI に任せ、難しい案件は人に残しています。

案件 担い手
出発地と目的地を往復する「単純往復」 AI が読み取り、見積もりを作って登録。送る一歩手前まで
複数の地点を巡る「周遊」 コンサルタント(人)
最後の決定 人

ここから考えたい 3 つの問い

  • AI の精度が足りないとき、対象を絞り直すことを考えましたか?
  • あなたの職場の定型業務のうち、決まった形に乗る仕事はどれくらいありますか?
  • AI に任せた仕事の、最後の判断は誰が持っていますか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの? — 見積もりメールを AI が下書き

HIS は法人の出張手配の業務に、業務の自動化ソフトを手がける UiPath の仕組みを入れました。自分で段取りを組んで作業を進める AI(AI エージェント)と、決まった操作を自動でこなすソフトのロボットを組み合わせています。

顧客のメールを読み取り、見積もりを作り、社内のシステムに登録します。メールを送る一歩手前までを自動で整える仕組みです。

2026 年 4 月半ばに動き始め、7 月には約 400 件の見積もりメールを手直しなしで送れるまでになりました。対象 1,000 件のうちの約 400 件です。

項目 内容
手直しなしで送れた見積もり 対象 1,000 件のうち約 400 件
減った作業時間 月 100 時間
フェーズ 1 の目標 月 300 時間以上の削減
対象の顧客 2026 年 8 月から関東地区の全顧客へ拡大

なぜ 2023 年からうまくいかなかったの?

HIS は 2023 年ごろから、AI で見積もりの仕事を効率化する試みを始めていました。担当者は「従来型のAIで数カ月トライしましたが、目指す性能が得られませんでした」と振り返ります。

原因は、依頼メールの書き方が顧客企業や担当者によってばらばらだったことです。満足な精度で読み取るのが難しかったといいます。

転機は約 2 年後の 2025 年でした。取引先でもあった UiPath と話したことがきっかけです。その後も、見積もりの精度を上げるため、約半年にわたり毎日のように試行錯誤を重ねました。

社内の決まりも壁でした。法人営業本部の小林強一次長は「社内のAI利用規定を突破するのが一番の関門だったかもしれません」と話しています。

どこを AI に任せたの? — 「単純往復」に絞る

HIS のコンサルタントの仕事は、見積もり、予約、請求、入金、発券、チケットの納品という 6 つの工程で進みます。HIS が最初に選んだのは、このうちの見積もりです。

さらに対象を、出発地と目的地を往復するだけの「単純往復」に絞りました。単純往復でも、見積もりの作成には 20 分程度かかります。一方、10〜15 分で済む案件もあれば、何度もやり取りが要る案件もあります。

数字で見ると、絞り方の理由が分かります。出張全体の 6 割が単純往復です。そのうえ出張の 3 分の 1 ほどは、顧客が HIS のサイトから直接発注します。手作業で処理していた単純往復は、全体の約 4 割を占めていました。

複数の地点を巡る「周遊」は、見積もりが難しく、コンサルタントの専門性が要ります。ここは最初の自動化から外しました。

仕事はどう変わるの?

HIS は段階を踏んで、自動化の範囲を広げる計画です。

段階 中身
フェーズ 1 単純往復の見積もりを自動化
フェーズ 2 単純往復以外の見積もりにも対応。予約・請求・発券の自動化も目指す
フェーズ 3 顧客の情報、企業の購買ルール、コンサルタント個人の技能の 3 つを組み合わせ、より合った返答を目指す

それでも、最後の決定は人が持つという考えです。小林次長は「「AI=人の置き換え」という考えは、今すぐ捨てましょう」と述べています。

SYNCON の視点 — 精度の壁は、対象を絞って越える

AI の導入が止まる会社の多くは、「AI の精度が足りない」で話が終わります。HIS の例が示すのは、精度は AI の性能だけでなく、任せる仕事の選び方でも決まるということです。

書き方がばらばらなメールを全部読ませると、精度は出ません。決まった形に乗る案件だけに絞れば、同じ技術でも実用になります。HIS はその範囲を、出張の 6 割という自社の数字から決めました。

自社で決めるべきことは 3 つです。定型業務のうち、決まった形に乗る割合を数えること。そこだけを先に任せること。そして、最後の判断を誰が持つかを先に決めることです。効果は、HIS のように月の作業時間で測ると、次の段階に進むかどうかを判断しやすくなります。

要点まとめ

  • HIS が UiPath の AI エージェントとロボットで、法人出張の見積もりメールを自動化
  • 2026 年 7 月には、対象 1,000 件のうち約 400 件を手直しなしで送付。月 100 時間を削減
  • 2023 年ごろからの試みは、メールの書き方がばらばらで精度が出なかった
  • 出張の 6 割を占める「単純往復」に絞り、難しい「周遊」は人に残した
  • フェーズ 1 の目標は月 300 時間以上の削減。フェーズ 2・3 で範囲を広げる
  • 最後の決定は人が持つ。社内の AI の利用規定が一番の関門だった

情報ソース:
・UiPath「顧客事例:株式会社エイチ・アイ・エス」
・ITmedia エンタープライズ「HISが月100時間を削減 AIエージェントで法人出張の見積もり、どう自動化した?」(2026 年 10 月 27 日)

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