【KEYWORD SYNC】情シスは増やさない、でもデジタル化はする — 74.3% の本音

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社内のシステムを見る部門(情シス)の人手が足りない。そう答えた中小企業の経営者は 29.5% だった。ところが、その不足を認めた経営者の 74.3% が、新しく正社員を採用する予定はないと答えている。人は増やさない、それでもデジタル化(DX)は進める。ジー・ブーンの調査は、多くの経営者が社内で口に出しにくい前提を、そのまま数字にして見せている。

何が起きたか

ジー・ブーンが 2026 年 6 月に実施した「中小企業の情報システム部門に関する実態調査」は、中小企業の経営者 2254 人にインターネットで答えてもらったものだ。自社の情報システム部門の人材が不足していると答えたのは 29.5%。およそ三割が、社内のシステムを見る体制に穴があると自覚している。

では採用するのかというと、答えは逆だった。正社員の採用予定を聞くと「採用はしたいが現実的に難しく予定していない」が 44.5% で最も多く、「採用予定はない」の 29.8% と合わせて 74.3%。不足を認めながら、四社に三社は人を増やさない側に立っている。

増やさない理由の一位は「不透明な経済情勢下で、固定費(人件費)を増やすリスクを避けたいため」で 43.9%。二位は「昨今の IT 人材高騰により、自社の予算内では優秀な人材の採用が難しいため」で 28.9% だった。前者は景気の話、後者は相場の話であって、どちらも「必要性を感じていないから採らない」ではない。必要だと分かったうえで、採らないという判断が先に置かれている。

「採用で解く」は、はじめから選ばれていない

この調査で見落とせないのは、採用しないと答えた層が、デジタル化そのものを諦めてはいないことだ。「DX の推進意向がある」と答えた割合は 57.9%。人を増やさない前提のまま、業務のやり方は変えたいという経営者が半数を超えている。

その手段として一番に挙がったのが「導入が容易な IT ツール、SaaS(自社で作らず契約して使うクラウド型のソフト)の活用」で 42.3% だった。自社でシステムを作らず、出来合いのサービスを契約して使う。人を雇わずに機能だけ買う、という選び方である。これ自体は理にかなっている。会計、勤怠、名刺、問い合わせ対応。かつては開発が必要だった領域の多くが、いまは契約すれば翌日から動く。

ただし、ここで仕事の性質が変わる。社内に必要なのは「作る人」ではなく「買うものと捨てるものを決める人」になる。そして決める仕事は、契約書に判子を押す瞬間ではなく、その前の比較と取捨選択のところにある。

経営層への影響 — 現場が恐れているのは導入の失敗ではない

同じ調査で、人材が不足した状態でデジタル化を進めるときの懸念を聞いている。最多は「専門知識不足によって費用対効果の低いシステムを導入してしまうリスク」で 42.7%。次が「日常の保守・トラブル対処が優先され、DX がいつまでも進まずに形骸化するリスク」で 38.5% だった。

この二つは、どちらも導入作業そのものの失敗ではない。前者は選ぶ段階の失敗であり、後者は選ぶ時間が確保できない状態の失敗である。つまり現場の経営者が恐れているのは、ツールを入れられないことではなく、入れる前と入れた後の判断が誰の手にもないことだ。

採用で解こうとすると、この二つは解けない。手を動かせる人をひとり雇っても、その人は日常の保守に吸い込まれる。38.5% が挙げた形骸化は、むしろ人を一人だけ増やした会社で起きやすい。足りないのは作業量ではなく、決裁の手前にある判断だからだ。

SYNCON の視点 — 増やすのは人数ではなく、決める席

人件費を増やせないという判断は、それ自体としては合理的だ。43.9% が挙げた理由の通り、固定費は一度増やすと景気に合わせて下げられない。問題は、採用を見送った後に「では誰が決めるのか」が空席のまま残ることにある。空席のまま各部署が個別にサービスを契約すると、三年後には誰も全体像を説明できない状態になる。42.7% が恐れている費用対効果の低い導入は、そうやって積み上がる。

判断できる人を、社内の誰かに任せる。この人選は技術の資格や経験年数では見抜けない。見るべきは三つだ。第一に、業務を工程に分けて説明できるか。「経理が大変」ではなく「請求書の確認に何人が何日かかっている」と言える人は、ツールの要否も自分で判定できる。第二に、やらないと決めた経験があるか。導入した実績より、検討して見送った理由を語れる人のほうが、費用対効果を見ている。第三に、止める条件を先に書けるか。使わなくなったサービスを解約まで持っていけるかどうかが、三年後の固定費を決める。この三つは、面接でも、いま社内にいる人を見渡すときにも、そのまま使える。来週の経営会議で問うべきは、情シスを何人にするかではなく、社内で買うものと捨てるものを決める席に、いま誰の名前が書かれているか、である。

要点まとめ

  • 情報システム部門の人材が不足していると答えた中小企業の経営者は 29.5%。うち 74.3% は新たな正社員を採用する予定がない
  • 採用しない理由の一位は人件費という固定費を増やすリスクの回避で 43.9%、二位は IT 人材の相場高騰で 28.9%。必要性は認めたうえでの判断
  • それでもデジタル化を進める意向は 57.9%。手段の一位は導入が容易な SaaS の活用で 42.3%
  • 懸念の一位は専門知識不足で費用対効果の低いシステムを入れてしまうこと(42.7%)、二位は保守に追われて形骸化すること(38.5%)。どちらも作業ではなく判断の欠落
  • 採用を見送るなら、買うものと捨てるものを決める席を誰に与えるかを同時に決める。判断できる人は、工程で説明できるか、見送った経験があるか、止める条件を書けるかで見る

情報ソース:
・ITmedia ビジネスオンライン「『情シスは利益を生まない』『人件費増はリスク』 DXを進めたいが”採用しない”中小企業の葛藤」(2026 年 09 月 21 日)
・TechTargetジャパン「情シス不足でも『採用しない』中小が7割 DXを阻む本当の原因」(2026 年 08 月 19 日)

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