米アンソロピックが、AI の Claude が書く文章に「見えない印」を入れ始めました。欧州連合(EU)の AI 規制に合わせた対応で、世界中の利用者が対象です。
提案書や広報文を AI で下書きしている会社は、どこまで AI に任せて、どこから人が書くのかを決めておく時期に来ています。
30 秒でわかるポイント
- Claude の文章に、読んでも分からない印が入る。製品や地域を問わない
- 軽く手直ししても印は残りやすい。全部の言葉を書き換えると消える
- 見分ける道具は、いまは規制当局や報道機関などに限って提供
1 分でわかる解説
印は、言葉の選び方の「くせ」として文章に埋め込まれます。人が読んでも違いは分かりません。専用の鍵を持つ側が調べると、「Claude が関わった可能性」が確率で出ます。
ただし、万能ではありません。短い文章や、事実を並べただけの文章では見分けにくくなります。人が書いた文章を Claude が校正しただけなら、印はほとんど付きません。
| こんなとき | 印は |
|---|---|
| AI の下書きを少し直して使う | 残りやすい |
| AI に翻訳させる | 残る |
| 人の文章を AI に校正させる | ほとんど付かない |
| 全部の言葉を人が書き換える | 消える |
自社で確かめる 3 つの問い
- 社外に出す文書のうち、AI の下書きをそのまま使ってよいものを決めていますか?
- AI を使ったことを相手に伝えるかどうか、社内で方針がありますか?
- 「人が書いた」と言える手直しの程度を、誰が判断していますか?
全文を読む(約 5 分)
何が起きたの? — Claude の文章に見えない印
アンソロピックは 2026 年 8 月、Claude が書く文章に電子透かしを入れると発表しました。電子透かしとは、読んでも分からない形で文章に埋め込む目印のことです。
きっかけは EU の AI 法です。AI が作ったり手を加えたりした中身を、機械で見分けられるようにすることを求めています(第 50 条)。この決まりに沿った透明性の規範が、8 月 2 日に動き始めました。
印は、AI の本体(モデル)の段階で入ります。このため、対話画面の Claude でも、開発者向けの Claude Code でも、自社のシステムから呼び出す窓口(API)でも、同じように付きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の地域 | EU に限らず世界全体。地域で分ける確かな方法がまだ無いため |
| 対象のモデル | これから出るモデル。8 月 2 日より前に出たモデルは、数カ月かけて対応 |
| 画像やファイル | 来歴を示す業界標準(C2PA)に沿った、署名付きの小さな証明書を付ける |
| 見分ける道具 | 検出の API を限定公開。規制当局、法執行機関、報道機関、事実確認の団体、研究者、教育機関など |
同じ EU の規範には、Google、OpenAI、Meta、Microsoft なども従うと表明しています。Claude だけの話ではありません。
どういう仕組み? どこまで見分けられるの?
AI は文章を書くとき、次に置く言葉を候補の中から選んでいます。透かしは、秘密の「鍵」と直前の数語をもとに、この選び方に一定のくせを持たせます。Google DeepMind が 2024 年に論文で公開した方式(SynthID-Text)を土台にしています。
たとえるなら、筆跡のようなものです。1 文字だけでは誰の字か分かりませんが、1 枚書けば癖が見えてきます。同じように、文章が長いほど判定の確からしさは上がります。
アンソロピックは、限界も説明しています。
- 短い文章は、言葉の選び方が少ないため見分けにくい
- 事実を並べた文章は、正確さを保つと選べる言葉が少なく、印が薄くなる
- 軽い編集では、印は完全には消えない。全部の言葉を置き換える書き直しでは消える
- Claude が翻訳した文章には印が残る。すべての言葉を Claude が選んでいるため
- 判定できるのは「Claude が関わった可能性」まで。「Claude が書いた」と「Claude が大きく手を入れた」は区別できない
- 人が書いたことを証明する道具ではない
米 TechCrunch は、どの程度手を入れれば印が消えるのかは、はっきりしないと伝えています。なお、アンソロピックは社内の試験で、文章の中身や読みやすさへの影響は見られなかったとしています。
会社の文書はどう変わるの?
日経クロステックは、AI を使ったかどうかが作り手以外にも分かるなら、利用者への影響は大きいと指摘しています。
いまのところ、検出の道具を使えるのは規制当局や報道機関などに限られます。取引先が明日から自社の提案書を調べられる、という段階ではありません。それでも、報道機関や教育機関が確かめられるようになった意味は小さくありません。
| これまで | これから | |
|---|---|---|
| AI を使ったか | 書いた本人にしか分からない | 道具を持つ第三者が、可能性として確かめられる |
| 「少し直した」文章 | 人の文章として扱ってきた | AI が関わったと判定されうる |
| 翻訳文 | 道具の一つとして意識されにくい | AI の翻訳にも印が残る |
特に気をつけたいのは、「AI の下書きを人が軽く直した文章」です。社内では「人が書いた」と思っていても、判定では AI が関わったと出る可能性があります。
SYNCON の視点 — 隠すかではなく、どう書き分けるか
透かしを避ける工夫に時間を使うのは、得策ではありません。全部の言葉を書き換えれば消えますが、それは最初から人が書くのとほぼ同じ手間です。考えるべきは、AI を使ったと分かっても困らない文書の運用です。
決めておきたいのは 3 点です。一つ目は、文書の種類ごとの線引きです。社内資料、提案書、広報文、お詫び文で、AI に任せる範囲は違ってよいはずです。二つ目は、AI を使ったことを相手に伝えるかどうかの方針です。三つ目は、最終的な文責を誰が持つかです。
もう一つの見方もあります。人の文章を AI に校正させる使い方では、印はほとんど付きません。自分たちの言葉で書き、AI に点検させる。この順番を基本にすれば、文章の持ち主がはっきりします。
要点まとめ
- アンソロピックが、EU の AI 法(第 50 条)への対応として、Claude の文章に見えない印を入れる
- 印は世界全体に、製品を問わず付く。Google や OpenAI なども同じ規範に従う
- 軽い編集や Claude による翻訳では残り、全部の言葉を書き換えると消える
- 短い文章や事実を並べた文章は見分けにくく、判定は「関わった可能性」まで
- 検出の道具は、いまは規制当局や報道機関などに限定
- 文書の種類ごとの任せ方、開示の方針、文責の置き場所を先に決めておく
情報ソース:
・日経クロステック「AI出力文に『電子透かし』 EU規制受けアンソロピックが導入」(日経コンピュータ 2026 年 10 月 1 日号)
・Anthropic「How Claude’s text watermarking works」(2026 年 8 月 14 日、9 月 1 日更新)
・Impress Watch「Claudeで生成した文章に『電子透かし』導入 編集しても残る」(2026 年 8 月 15 日)
・TechCrunch「Anthropic says it will watermark text generated by its AI models」(2026 年 8 月 11 日)
・Search Engine Journal「Anthropic To Mark Claude Text & Files Under EU AI Act Code」
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