X で 30 万回を超えて表示された投稿を、SYNCON 編集部が深掘りします。ロイター通信(@Reuters)が 10 月 26 日に流した分析記事「In China, the AI bubble has already burst(中国では AI バブルはもう弾けた)」です。世界の AI 株がまだ揺れている段階で、中国では急落がすでに起きていました。AI の会社と取引する側が何を確かめるべきかを考えます。
30 秒でわかるポイント
- 中国の AI と半導体の主力 50 銘柄でつくる指数(STAR50)は、4 か月足らずで 40% 下がり、約 4,800 億ドル(約 76 兆円)の時価総額が消えました
- 米国のナスダックは、3 週間前の最高値から 6% の下げにとどまっています
- 上場や資金集めの道が狭まり、米国の規制も重なっています。AI の取引先は、資金と規制の 2 点でも見る必要があります
1 分でわかる解説
ロイターの記事が効いているのは、「AI はバブルか」という世界の議論に、すでに起きた実例を示した点です。中国では、AI 関連株が時価総額の 42%、売買代金の 57% を占めるまで膨らんでいました(米金融大手ゴールドマン・サックスの分析)。
下げの理由は 1 つではありません。高すぎた株価、AI の需要への心配、米国が中国製の部品をデータセンターから締め出す動きが重なりました。
経営にとって大事なのは、株価の先です。多くの会社の上場計画が止まりそうだと、記事は投資家の見方を伝えています。技術が優れていても、資金が続かなければ長く付き合える取引先にはなりません。
ここから考えたい 3 つの問い
- あなたの職場で使っている AI のサービスは、どの会社が作り、その会社の資金はどこから来ていますか?
- 取引先が資金集めでつまずいたとき、代わりの手段をすぐ用意できますか?
- 海外の規制で部品やサービスが使えなくなる可能性を、取引先を選ぶときに確かめていますか?
全文を読む(約 5 分)
中国の AI 株に、何が起きたの?
ロイターの記事は、トム・ウェストブルック記者がまとめた分析です。主役は、上海の新興ハイテク市場の主力 50 銘柄でつくる指数(STAR50)です。AI と半導体の会社が中心で、4 か月足らずで 40% 下がりました。
消えた時価総額は約 4,800 億ドル(約 76 兆円)です。上げ相場は約 2 年続き、景気対策への期待から始まったと記事は振り返っています。
個別の会社でも下げは大きく出ています。AI 向けの半導体をつくる MetaX と Moore Threads は、7 月から株価が半分になりました。光通信の部品をつくる Zhongji Innolight と Eoptolink は、高値から約 60% 下がっています。半導体メーカーの CXMT も、この 1 か月で 4 分の 1 を超える値下がりです。
ロボットの Unitree は、上場のときに個人投資家の申し込みが 8,000 倍を超えた会社です。その株価も 8 月の取引開始から半分になりました。なお、この「半分」は上場初日の高い値段から見た数字で、公開価格よりは高い水準にあります。
「もう弾けた」と言えるほど、米国と何が違うの?
見出しが強く響くのは、比べる相手を並べたからです。中国の大型株の指数も、6 月の高値から約 20% 下がりました。一方、米国のハイテク株の市場ナスダックは、最高値からの下げが 6% にとどまります。
| 指数 | 高値からの下げ | 株価収益率(PER) |
|---|---|---|
| STAR50(中国の AI・半導体の主力) | 4 か月足らずで 40% | 約 100 倍(高いときは約 250 倍) |
| 中国の大型株の指数 | 6 月の高値から約 20% | 記事に記載なし |
| 米国のナスダック | 3 週間前の最高値から 6% | ナスダック 100 で 30 倍 |
株価収益率(PER)は、株価が 1 年分の利益の何倍かを示す数字です。下がった今でも、STAR50 はナスダック 100 よりずっと高い水準にあり、投資家はさらなる下げを心配しています。
北京のファンドマネジャー、ドン・バオジェン氏は、相場が投機的な熱狂に変わり、いまその泡が弾けている、と語っています。
株価の下げは、AI の会社の何を変えるの?
株価が下がっても、AI の技術がすぐに消えるわけではありません。変わるのは、会社がお金を集める道です。
香港の運用会社 Lotus Asset Management のホン・ハオ氏は、この下げで上場を目指す多くの会社が足止めされるとみています。ハイテク企業の資金集めも鈍るという見方です。
中国企業は今年、国内の上場で 370 億ドル(約 5.8 兆円)を集めました。この 3 年で最も多い額で、その 3 分の 1 超がハイテク企業です(ブルームバーグの集計を伝えた 10 月 17 日の報道)。この資金の流れが細ることになります。
もう 1 つは規制です。光部品の 2 社が大きく下げた理由の一つは、米国が両社のデータセンターへの納入を禁じる方向に動いていることでした。製品が良くても、国の判断で売り先が閉じることがあります。
上海の運用会社のパートナー、ワン・ジュオ氏は、半導体や AI の部品の会社もいずれ値下げ競争に入るとみています。ほかの中国の製造業と同じ道です。
なぜここまで膨らんだの? 貯蓄を株へ呼び込む政策
中国の当局は、個人の貯蓄を株式市場に呼び込み、AI の成長資金に回そうとしてきました。目指したのは、急騰と急落をくり返さない「ゆっくり上がる相場」です。借金をしての売買や、超高速の売買も締め付けてきました。
それでも相場は過熱しました。中国の株式市場は個人投資家が中心で、損を免れた人は少ないと記事は伝えています。北京の運用会社のレオ・ワン氏は、主要な指数がハイテク株に偏り、資金の流れがゆがんだと指摘しています。
一方で、強気の見方もあります。ゴールドマン・サックスは今月、Innolight と CXMT を推奨銘柄の一覧に入れました。BNP パリバ証券のウィリアム・ブラットン氏は、慎重に選べば買い場だとしています。HSBC の調べでは、アジアのファンドはこの 3 か月売り越しながらも、中国株を多めに持ったままです。
つまり「弾けた」のは株価の話で、AI を使う事業そのものが終わったわけではありません。
SYNCON の視点 — 日本の非エンジニア経営層は何を盗むべきか
ロイターの記事から盗めるのは、AI の会社の強さは技術だけで決まらない、という見方です。資金が続くか、規制の影響を受けるかで、取引先としての強さは変わります。注目を集めた会社でも、外の事情で資金の道が急に狭くなります。AI のサービスやロボット、部品を性能と値段だけで選ぶと、ここを見落とします。
月曜から始められることは 3 つです。まず、使っている AI のサービスや部品の取引先を一覧にし、上場前で資金集めに頼る会社に印を付けます。次に、海外の規制で使えなくなりそうなものがないか、担当者と確かめます。最後に、契約を見直すときに、データを持ち出せるか、代わりの手段があるかを条件に入れます。
要点まとめ
- 中国の AI・半導体の主力指数(STAR50)は、4 か月足らずで 40% 下がりました
- 米国のナスダックは最高値から 6% の下げで、差がはっきりしています
- 中国では AI 関連株が時価総額の 42%、売買代金の 57% を占めていました
- 下げで上場や資金集めの道が狭まり、米国の納入禁止の動きも重なっています
- 「弾けた」のは株価の話です。強気の見方を示す金融機関もあります
- AI の取引先は、技術と値段に加えて、資金と規制の 2 点でも確かめます
情報ソース:
・Reuters「Analysis: In China, the AI bubble has already burst」(2026 年 10 月 26 日。Euronext と Yahoo Finance の転載で確認)
・Free Press Journal「China’s Equity Market Plunges 40% As Chipmakers Lose Half Their Value Amid Tech Selloff」(2026 年 10 月 17 日)
・DealStreetAsia「Unitree’s Shanghai IPO more than 8,000x oversubscribed by retail investors」(2026 年 8 月 10 日)
・Dao Insights「Unitree shares soar 460% on Shanghai debut」(2026 年 8 月 20 日)
・元投稿:ロイター通信(@Reuters)、2026 年 10 月 26 日
・円換算:欧州中央銀行(ECB)の参照レート(2026-10-26)
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