AI を全社で使う 60%、会社が変わったのは 21% — 分かれ目は経営の関与

DEEP SYNC

大企業の 60% が AI を全社で使っています。それでも、組織全体の変革につながった会社は 21% でした。

差を分けていたのは、道具の良し悪しではなく、経営がどこまで関わっているかです。

30 秒でわかるポイント

  • サイボウズが従業員 1,000 人以上の 551 社を調査。変革まで進んだのは 21%
  • 経営層が主導する会社は 90% が全社で活用。ほぼ関与しない会社は 23%
  • 米国の上場企業 600 社超の研究でも、投資は株主への見返りにまだ届いていない

1 分でわかる解説

いちばん多い答えは「一部の業務で効果は出ているが、全社には広がっていない」で、31% でした。使い始めることと、仕事の流れを変えることの間に段差があります。

段差を越えられるかは、経営層の関わり方で大きく変わります。

経営層の関わり方 全社で推進・活用している割合
AI の活用を主導し、意思決定している 90%
ほぼ関与していない 23%

最大の課題は「使いこなせる人材が少ない」で 49% でした。ツールを配っただけでは、成果は会社全体に届きません。

ここから考えたい 3 つの問い

  • あなたの職場で AI を使う目的を、ひと言で説明できますか?
  • AI の効果を、数字で測る物差しを決めていますか?
  • AI の旗振りは、誰の仕事になっていますか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの? — 使う会社は増え、変わる会社は少ない

サイボウズは、従業員 1,000 人以上の企業・団体で働く経営者・役員や、IT・システム関連の担当者に聞きました。インターネット調査で、期間は 2026 年 7 月 6 日〜9 日、回答は 551 社です。

AI を使う準備は、多くの会社で整っています。

項目 割合
AI 活用の戦略を作った 63%
AI を全社的に推進・活用している 60%
経営層が推進・主導している 72%
人材育成に取り組んでいる 76%

ところが成果を聞くと、景色が変わります。「組織全体の変革・業務改革に役立っている」は 21% でした。最も多いのは「一部の業務で効果は出ているが、全社には広がっていない」の 31% です。

戦略も、作っただけでは届きません。戦略が「全社に浸透している」と答えた会社は 12% でした。

何がつまずきになっているの?

課題の上位は次のとおりです。

課題 割合
使いこなせる人材が少ない 49%
AI の答えの正確さ・信頼性が不安 40%
セキュリティ上の懸念が解消されていない 37%
社内のデータや業務の事情と結びついていない 34%

推進の体制は「現場の担当者に任せている」が 41% で最多でした。専任の AI 推進チームや組織を置く会社は 34% です。

効果の測り方にも差があります。成果の物差し(KPI)を決めて数字で測っている会社は 28% にとどまりました。

ただし、この調査は一時点のアンケートです。経営層が関わったから成果が出たのか、成果が出た会社だから経営層が関わるのか、因果までは分かりません。

海外の会社も同じ壁に当たっているの?

米ハーバード・ビジネス・レビュー誌(HBR)は 10 月 26 日、「AI で株主に見返りを届ける 3 つの道筋」という論考を載せました。書き手はボストン コンサルティング グループ(BCG)の研究者たちです。

米国の上場企業 600 社超を調べたところ、およそ 4 分の 3 が AI に投資し、試しの段階を越えていました。それでも、株主への見返りの上積みは、まだ得られていないといいます。

論考の冒頭は、多くの経営者が抱く問いで始まります。「まだ早いだけなのか、それとも何かを間違えているのか」。なお、3 つの道筋の中身は有料部分のため、この記事では要約の範囲だけを扱います。

会社はどこから手を付ければいいの?

サイボウズは、経営層のリーダーシップのもとで活用の目的をはっきりさせ、課題に続けて取り組むことが求められると指摘しています。

これまで これから
ツールを配って、使い方は現場に任せる 経営が「何のために使うか」を決める
効果は感想で語る 物差しを決め、数字で追う
工夫は個人の中にとどまる 社内で共有し、ためていく

工夫の共有では、社内のポータルなどで組織的に共有・蓄積している会社が 44% でした。一方で、個人の中にとどまり、ほとんど共有されない会社も 22% あります。

SYNCON の視点 — 「使っている」と「変わった」は別の数字

AI の利用率は、経営会議で報告しやすい数字です。けれど、今回の調査が示すのは、利用率が上がっても会社が変わるとは限らないことです。

決めるべきことは 3 つです。AI で何を変えるのかを経営が言葉にすること。その変化を測る物差しを先に置くこと。そして、旗振りを現場任せにせず、責任者を決めることです。

人材不足は、研修だけでは埋まりません。目的と物差しがあってはじめて、誰に何を学んでもらうかが決まります。

要点まとめ

  • サイボウズの 551 社調査で、AI を全社で使う会社は 60%、変革までつながったのは 21%
  • 経営層が主導する会社は 90% が全社で活用。ほぼ関与しない会社は 23%
  • 最大の課題は人材不足で 49%。推進は現場任せが 41% で最多
  • 効果を数字で測っている会社は 28%
  • HBR の論考でも、米国の上場企業 600 社超の多くで株主への見返りはまだ表れていない
  • 関わり方と成果の因果は未確認。それでも、目的と物差しと責任者を決めるのは経営の仕事

情報ソース:
・ITmedia エンタープライズ「なぜ日本の大企業はAIを活用しても『会社を変えられない』のか? サイボウズが551社を調査」(2026 年 10 月 26 日)
・Harvard Business Review「3 Paths to Delivering Shareholder Returns with AI」(2026 年 10 月 26 日)

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