
AI 開発会社の Anthropic が 9 月 30 日、今のロボットが人の仕事をどこまでこなせるかを調べた研究を公開しました。体を使う作業の多くは「できる」一方、人より安くできる作業はごくわずかという結果です。
30 秒でわかるポイント
- 体を使う作業の 74% は、条件しだいで今のロボットでもこなせると見積もっています。
- ただし、人より安くこなせるのは仕事全体の 0.3% にとどまります。
- 過去の値下がりのペースが続けば、この割合が 10% に届くまで約 40 年かかる計算です。
1 分でわかる解説
米国のおよそ 900 職種、約 1.9 万の作業を一つずつ採点した研究です。採点には同社の AI(Claude)を使い、実際に導入・販売・実演されたロボットだけを根拠にしています。
影響を受けやすいのは、運転と倉庫の仕事です。看護や修理は、整った環境でもロボットにできることが少ないとされました。
壁はお金です。溶接は、部品の位置合わせや仕上げなど周りの作業まで機械に任せると、人の約 5 倍の費用になると見積もられています。
ここから考えたい 3 つの問い
- 身の回りの体を使う作業は、毎回同じ場所で行うものと、毎回状況が違うもののどちらが多いでしょうか?
- 機械に任せられそうな作業を 1 つ選んだとき、その前後で人の手が残る作業はどれでしょうか?
- 「技術的にできる」と「人より安くできる」の差を、設備を選ぶときにどう見積もっていますか?
全文を読む(約 5 分)
何が起きたの?
Anthropic は 2026 年 9 月 30 日、経済分野の研究「What work can robots do?(ロボットはどんな仕事ができるか)」を公開しました。著者は同社の研究者 Russell Legate-Yang 氏と Maxim Massenkoff 氏です。
ここでの「ロボット」は、周りを感知して自分で動く機械のことです。車を読み取って水の出方を変える洗車機は含み、外科医がすべて操作する手術機械は含みません。
数えるのは、すでに導入・販売・実演されたものだけです。開発中の人型ロボットの将来の性能は、74% や 0.3% の数字には入っていません。
どうやって測ったの?
材料は、米国の職業データベース(O*NET)にある約 900 職種、約 1.9 万の作業です。このうち体を使う作業 7,594 件を、ロボットがどこでこなせるかで 4 段階に分けました。
| 段階 | ロボットがこなせる場所 | 作業の例 | 体を使う作業に占める割合 |
|---|---|---|---|
| E0 | どこでもできない | 髪を染める、足場を組む | 約 4 分の 1 |
| E1 | ロボット専用の場所(工場のラインなど) | 患者ごとの食事をトレーに並べる | 約半分 |
| E2 | 整った人の職場(物流倉庫など) | 病院で薬を届ける | 22% |
| E3 | 決まった形のない場所(一般道など) | 車の運転 | 2% |
割合は、働く人の数と、作業にかける時間で重みをつけています。E1〜E3 を合わせた 74% が「何らかの条件でできる」作業です。体を使う作業は全労働時間の 46% なので、仕事全体では 34% にあたります。
採点と費用の見積もりは、Claude に実在のロボットをウェブで調べさせて行いました。この記事の数字の多くは Anthropic 自身の推計です(雇用の数字は米労働統計局のデータ)。
なぜ割に合わないの?
人と同じ量の仕事をするのに、ロボットではいくらかかるかを見積もりました。本体だけでなく、設置、保守、電気代、人による見守りまで含めた費用です。人より安くこなせる作業は、仕事全体の 0.3% でした。

職種ごとの例は次のとおりです(円換算は 1 ドル= 158.17 円)。
| 仕事 | ロボットと人の比較(年あたり) | 補足 |
|---|---|---|
| 梱包作業 | ロボットが約 2,500 ドル(約 40 万円)安い | 設備は 200 万ドル(約 3 億 1,600 万円)超で約 14 人分。1 人分は年約 4.5 万ドル(約 712 万円) |
| タクシー運転 | ロボットが約 7,000 ドル(約 111 万円)高い | 差は小さいが、規制の壁がある |
| 溶接 | ロボットが約 5 倍高い | 部品の位置合わせや仕上げなど、周りの作業も機械が要る |
| 皿洗い・清掃 | ロボットが数倍高い | 清掃ロボットは人より最大 10 倍遅い |
梱包作業の人件費は年約 4.9 万ドル(約 775 万円)です。このうちロボットに任せられる 97% 分と比べて、ロボットが少し安くなりました。
0.3% を 10% に広げるには、ロボットの費用が約 70% 下がる必要があります。業界や政府のデータでは、ロボットの価格は 1990 年代から年約 3% ずつ下がってきました。このペースだと約 40 年かかります。
速く進む場合の試算もあります。ロボット本体が年 12%、それ以外の費用が年 6% ずつ下がり、できる作業の増え方も今の 2 倍になると仮定します。すると、体を使う作業の半分で人より安くなる時期が、2085 年から 2050 年に早まります。
壁はお金だけではありません。能力の不足は体を使う作業の約 70% で壁になり、その大きな理由は物をつかんで扱う力です。規制で認められない作業が 14%、人が望まない作業(子どものおむつ替えなど)が 4 分の 1 あるとしています。
人の仕事はどう変わるの?
研究チームは 1977 年以降のデータで、この測り方を確かめています。ロボットができる作業が多い仕事ほど、その後の数十年で賃金と雇用が減っていました。
梱包作業の雇用は 2015 年から 22% 減りました。米労働統計局(BLS)の予測では、2035 年までに減る人数が 11 番目に多い職種です。記事は、タクシー運転手や倉庫の梱包作業員が、看護師や整備士より先に変化を受けると見ています。
文章を扱う AI(LLM)だけなら、影響を受ける作業は仕事全体の約半分です。ロボットを足すと 81% に広がります。事務の仕事は、パソコン作業に軽い体の作業が加わるため、ほぼ 100% になります。
米国の店では、棚の空きを見つけても、補充は人に知らせて任せるロボットが使われています。日本のコンビニでは、ロボットが冷蔵庫に自分で飲み物を補充している、と記事は紹介しています。
一方で記事は、人より安くなっても、すぐ失業が増えるとは限らないとも書いています。人に残る作業が流れを止めたり、ロボットの費用に人の見守りや修理が含まれたりするためです。
SYNCON の視点 — 自動化は「作業」より「工程ごと」で見積もる
梱包では、作業の 97% を複数のロボットで引き受ける前提で、人とほぼ同じ費用に収まりました。溶接は中心の作業をロボットができても、周りの作業まで機械にすると、費用が人の約 5 倍に膨らみます。自動化は 1 つの作業より、工程全体の費用で比べると判断を誤りにくそうです。
数字は米国の賃金と職場が前提です。日本は人件費の水準も人手不足の度合いも違うため、割に合う作業の割合は変わるかもしれません。コンビニの補充ロボットのように、日本が先に進んでいる現場もあります。
頭を使う仕事は LLM、体を使う仕事はロボットと、変わる順番と速さは違います。体を使う仕事では、ロボットの値下がりの速さが、変化の速さを決めることになりそうです。
未確認の点:費用の前提(梱包の例では耐用年数約 10 年・資本コスト 8%)は作業ごとに Claude が見積もったもので、日本の職種や賃金にあてはめた試算はありません。外部の研究者による検証も確認していません。
情報ソース:
・Anthropic「What work can robots do?」(Russell Legate-Yang、Maxim Massenkoff、2026 年 9 月 30 日)と付録
・三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング「為替相場」(2026 年 10 月 9 日、TTS と TTB の中間値)
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