X で久保田雅也氏(@kubotamas)が紹介した、米国の投資会社 Blackstone の話を SYNCON 編集部が深掘りします。投資を決める会議に、人のメモと並べて「AI が書いたもう一つのメモ」を出し、AI には票を持たせていないという話です。
久保田氏の投稿は、「メモは 2 本」「最終決定は人間」と仕組みの骨格だけを短く言い切っていました。AI を会議にどう置くかという、どの会社にもある問いにそのまま置き換えられる紹介です。
30 秒でわかるポイント
- Blackstone では、審査に上がるほぼすべての案件に 2 本のメモが付きます。投資チームのメモと、AI のメモです
- AI のメモを書くのは「AI の最高投資責任者(AI CIO)」。14 年超の社内の案件メモと議論で学習しています
- AI CIO は月曜の投資委員会で意見を出しますが、投票権はありません。決めるのは人です
1 分でわかる解説
AI に決めさせるのではなく、判断の材料を一つ増やす使い方です。人のメモと AI のメモが並ぶので、会議では両者の違いが議論の出発点になります。
材料は社外のデータではなく、自社が積み上げてきた過去のメモと議論です。どの会社にもある稟議書や議事録が、同じ使い方の材料になりえます。
ここから考えたい 3 つの問い
- あなたの職場の会議で、あえて別の見方を出す役は誰が担っていますか?
- 過去の稟議書や議事録は、あとから読み返せる形で残っていますか?
- AI に意見は出させても、決める権限は渡さない。その線はどこに引きますか?
全文を読む(約 4 分)
投資の会議に、なぜ AI のメモを並べるの?
久保田雅也氏(@kubotamas)は 10 月 19 日、Trung Phan 氏(@TrungTPhan)の英語の投稿を引用し、Blackstone の仕組みを日本語で紹介しました。投資チームのメモと AI CIO のメモの 2 本が用意され、最終決定は人に委ねられる、という内容です。
おおもとは、Bloomberg が 10 月 15 日に出したジョン・グレイ社長の特集記事です。記事によると、審査に上がるほぼすべての案件に 2 本のメモが付きます。なお、久保田氏の投稿は「必ず」と書いていますが、記事の表現は「ほぼすべて」です。
AI CIO は、14 年超の社内の案件メモと議論を含むデータで学習したモデルです。グレイ社長は、月曜に開く投資委員会で AI CIO に発言の場を与えました。
| 投資チームのメモ | AI CIO のメモ | |
|---|---|---|
| 書き手 | 案件を担当する人 | 社内の記録で学習した AI |
| 材料 | その案件の調査 | 14 年超の案件メモと議論 |
| 投票権 | 人の委員が持つ | 持たない |
票を持たない AI は、何の役に立つの?
久保田氏は、この仕組みの狙いを「議論の質の向上」と読みました。Blackstone 自身がそう説明した記述は、確認できた報道には見当たりません。ただ、仕組みの形からは自然な読み方です。
英国の業界紙 Private Equity Wire は、この AI を「投資委員会の助言役」と紹介しています。従来の投資チームの推奨と並べて、評価を出す役割です。
ここで効いているのが、久保田氏が強調した「投票権は持たない」という線引きです。AI が決める仕組みにすると、誰が責任を持つのかがあいまいになります。意見を出す役にとどめれば、責任は人に残したまま、見落としに気づく機会だけを増やせます。
Blackstone は AI にどこまで本気なの?
Bloomberg の記事で、グレイ社長は AI への投資を、社内で進むなかで「いちばん重要なこと」と語っています。2 月には Reuters の取材に、AI が事業を壊すリスクは「ページのいちばん上」にあると話しました。ほぼすべての仕事で考えるべきだ、という趣旨です。
組織も変えています。4 月には AI 投資を担う新しい部門 Blackstone N1 をつくり、ジャス・カイラ氏を責任者に据えました。投資先の経営を支える部門を率いるロドニー・ゼメル氏は、仕事の時間の 60% 近くを AI に使っていると話しています。
投資先は 280 社を超え、そこでも AI の活用を進めています。データセンターへの投資は 7 月時点で 2,000 億ドル(約 32 兆円)に達しました。2024 年 6 月の 550 億ドル(約 8.7 兆円)から大きく増えています。AI に大きく賭ける会社が、自分たちの判断の場では AI に票を渡していない点が目を引きます。
SYNCON の視点 — 日本の非エンジニア経営層は何を盗むべきか
盗むべきは、AI を「決める人」ではなく「もう一つの意見書を書く人」として会議に置く形です。稟議や投資判断の場で、担当者の起案と並べて AI の意見書を出す。これなら決裁の仕組みも責任の所在も変えずに始められます。
月曜からできることは二つです。一つは、過去の稟議書と議事録、とくに見送った案件や失敗した案件の記録が残っているかを確かめること。もう一つは、次の大きな判断で、AI に「反対の立場から」意見を書かせ、会議の資料に添えてみることです。決めるのは、これまでどおり人です。
要点まとめ
- Blackstone では、審査に上がるほぼすべての案件に、投資チームと AI CIO の 2 本のメモが付きます
- AI CIO は 14 年超の社内の案件メモと議論で学習し、月曜の投資委員会で意見を出します
- AI CIO に投票権はなく、決めるのは人です
- グレイ社長は AI への投資を、社内で「いちばん重要なこと」と位置づけています
- 日本の会社でも、過去の稟議書や議事録を材料に、AI の意見書を会議に添える形はすぐに試せます
情報ソース:
・Bloomberg(Yahoo Finance 転載)「Blackstone’s Jon Gray Plots Once-in-a-Century Bet on the AI Boom」(2026 年 10 月 15 日)
・Private Equity Wire「Blackstone’s AI investments reach $200bn in data centres alone」(2026 年 10 月 16 日)
・Reuters(Yahoo Finance 転載)「Blackstone’s Gray says AI disruption risk is ‘top of the page’ for us」(2026 年 2 月 4 日)
・元投稿:久保田雅也氏(@kubotamas)、2026 年 10 月 19 日
・円換算:欧州中央銀行(ECB)の参照レート(2026-10-19)
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