AI で離職率 83.3%→7.7% — 経産省が選んだ中小 11 社の着手の順番

BUZZ SYNC

経済産業省が選んだ中小企業 11 社の成果を、1 社 1 ページで読める資料があります。AI の導入支援を手がける株式会社 AlgoX 代表の西本匠氏(@tkm_nishimoto)が X で紹介した投稿を、SYNCON 編集部が原典に戻って深掘りします。

従業員 26 名の訪問看護の会社で、離職率が 83.3% から 7.7% に下がった例も載っています。自社と規模の近い会社が、どの仕事から手を付けたのかが分かる資料です。

30 秒でわかるポイント

  • 経済産業省の「DX セレクション 2026」は、応募 81 社から 11 社を選び、取り組みと成果を 1 社 1 ページにまとめた
  • 北九州市の訪問看護プーラビダ(26 名)は、報告書の作成が 1 時間から 5 分に。離職率は 83.3% から 7.7% へ
  • 高松市のホテル川六(68 名)は、60 代の社員やパートを含む全従業員が社内向けの AI を作り、客室あたり売上が 25.1% 増えた

1 分でわかる解説

西本氏の投稿が効いていたのは、3 社の成果を「どの仕事が、どれだけ減ったか」で並べた点です。報告書、請求書、営業の提案書。どれも、どの会社にもある書類仕事です。

もう 1 つは読み方の提案です。規模の近い 1 社を選んで見比べると、差がツールなのか着手の順番なのかが分かる、と西本氏は書いています。

原典を読むと、3 社に共通するのは高価な道具ではありません。現場の全員が使う仕組みを先に作ったことです。

ここから考えたい 3 つの問い

  • 毎日の仕事で、いちばん時間を取られている書類はどれですか?
  • その書類を AI に下書きさせたら、浮いた時間を何に使いますか?
  • 新しい道具を、詳しい一部の人だけでなく全員で試す場はありますか?
全文を読む(約 4 分)

どんな資料なの?

経済産業省は、デジタル技術で事業を変える取り組み(DX)で成果を出した中堅・中小企業を毎年選んでいます。2026 年は 5 月 20 日に最終選考と表彰式があり、グランプリ 1 者、準グランプリ 2 者、優良事例 8 者の計 11 者が選ばれました。

西本氏が紹介したのは、その 11 社をまとめた「選定企業レポート」です。2026 年 6 月付けで、全 14 ページ。各社 1 ページに、事業の概要、取り組み、成果が並びます。

11 社の従業員数は 12 名から 399 名です。数字は各社の発表資料をもとに経済産業省がまとめたものです。なお、この制度は AI に限らずデジタル化全般の成果を選ぶもので、11 社は選び抜かれた上位の事例です。

書類が減ると、人は辞めなくなるの?

グランプリのプーラビダは、北九州市で訪問看護ステーションを運営する従業員 26 名の会社です。生成 AI を組み込んだ自社開発の仕組み「ほぽたくん」で、看護師の報告書づくりを支えました。

報告書の作成は 1 時間から 5 分になり、90% 減りました。報告書を郵送する手配も、2 時間から 3 分に縮んでいます。

変化は人の定着に表れました。離職率は取り組み前の 83.3% から、取り組み後は 7.7% に下がっています。利益率 10% 超での黒字化もレポートに記されています。

訪問看護は、訪問を終えた後の書類仕事が重い仕事です。そこを先に軽くしたことが、辞めない職場につながったと読めます。

60 代やパートが AI を作ると、何が変わるの?

高松市の川六は、宿泊特化型のホテルを営む従業員 68 名の会社です。宿泊特化型ホテルとして初めて選ばれました。

同社は、社内の資料を探してから答える AI の仕組み(RAG)を「KAWARAG」と名付けて使っています。レポートには「一部の IT 人材だけでなく、60 代の社員やパートを含む全従業員が RAG を開発」とあります。毎週、全店舗で RAG の活用を検討する会議も開いています。

過去のトラブル対応を読み込ませた「支配人 AI」も作りました。24 時間 365 日の緊急対応から、支配人と副支配人を解放するためです。

川六の指標 変化
客室あたり売上(RevPAR) 25.1% 増
人時生産性 44.0% 増
離職率 13.9% → 6.5%
1 人あたり月平均残業 6 時間 49 分 → 3 時間 54 分

客室あたり売上の伸びは、原典では 2023 年と 2025 年を比べた数字です。

月 575 分は、どこから生まれたの?

神戸市のエヌエスケーケーは、従業員 61 名の携帯電話販売代理店です。社長直轄の「DX 推進プロジェクトチーム」を置いて進めました。

請求書の処理で月 275 分、営業提案書の作成と引き継ぎで月 300 分を減らしています。西本氏はこの 2 つを足し、月 575 分として紹介しました。売上高は 16.8 億円(2023 年度)から 20.6 億円(2025 年度)に伸びています。

社内のやり方は、外に売れるの?

川六は、社内で磨いた手法を「川六モデル」としてまとめ、ほかのホテルの立て直しにも使っています。同社の発表では、経営不振のホテルを 3 カ月で黒字にし、稼働率 37% のホテルを 4 カ月で 92% に引き上げました。

経理の自動化も進め、売上 30 億円規模で経理担当はパート社員 1 名です。社内の書類仕事を減らした経験が、そのまま他社に提供できる商品になっています。

SYNCON の視点 — 日本の非エンジニア経営層は何を盗むべきか

3 社が最初に手を付けたのは、報告書、請求書、提案書でした。どの会社にもあり、効果を分や時間で測れる仕事です。月曜にできるのは、社内で時間を取っている書類を 3 つ挙げ、今かかっている時間を記録することです。測っておかなければ、減ったことも示せません。

もう 1 つは、使う人を限らないことです。川六は 60 代やパートまで全員を作り手にし、毎週の会議で使い方を話し合っています。詳しい担当者に任せきりのままだと、現場の知恵を取りこぼします。まず 1 つの書類について、全員で試す時間を週に 1 回つくることから始められます。

要点まとめ

  • 経済産業省の「DX セレクション 2026」選定企業レポートは、応募 81 社から選ばれた 11 社の取り組みを 1 社 1 ページで読める
  • プーラビダ(26 名)は報告書の作成を 1 時間から 5 分にし、離職率は 83.3% から 7.7% に下がった
  • 川六(68 名)は全従業員が社内向けの AI を作り、客室あたり売上 25.1% 増、離職率は 13.9% から 6.5% に
  • エヌエスケーケー(61 名)は請求書と提案書などで月 575 分を減らし、売上高は 20.6 億円に
  • 共通点は、測りやすい書類仕事から始め、現場の全員が使う仕組みを作ったこと

情報ソース:
・経済産業省「『DX セレクション 2026』選定企業レポート」(2026 年 6 月)
・経済産業省「DX セレクション」
・川六グループ「宿泊特化型ホテルで初の選出!川六グループが経済産業省主催『DX セレクション 2026』優良事例に選定」(2026 年 5 月 22 日)
・元投稿:西本匠氏(@tkm_nishimoto)、2026 年 10 月 4 日

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