テスラの事故車に約 169 万円 — 車の値打ちが「電池と部品」で決まり始めた

DEEP SYNC
前がつぶれた電気自動車から、電池と駆動装置と電子部品が取り出され、それぞれに値札が付いている整備工場のイラスト(AI で生成)

米国で、事故で大破したテスラの車が高い値段で取引されています。走れなくても、電池や駆動装置に買い手がつくためです。ただし、もとの数字は 1 社の取引記録で、読み方には注意がいります。

30 秒でわかるポイント

  • 事故車オークションの仲介会社によると、壊れたテスラの落札額の中央値は 1 万 700 ドル(約 169 万円)です。
  • 同社で扱う全車の中央値の 3 倍近くです。
  • 中古の電気自動車(EV)の平均価格も、2026 年 6 月までの 1 年で 7.4% 上がったと調査会社が発表しています。

1 分でわかる解説

ふつうの車は、全損になると部品取りか鉄くずの値段が中心です。電気自動車は、高価な電池や駆動装置が無事なら、それ自体が商品になります。

数字 内容(仲介会社 A Better Bid の記録)
1 万 700 ドル(約 169 万円) 壊れたテスラの落札額の中央値
3,850 ドル(約 61 万円) 同社で扱う全車の落札額の中央値

ただし事故車の数字は、1 社が 2019 年 1 月から 2026 年 6 月までに扱った 367 台分の記録です。米国全体の相場でも、いまの相場でもありません。

ここから考えたい 3 つの問い

  • 車や設備で、壊れても値段がつく部品はどれでしょうか?
  • 燃料の値段が変わると、買う判断はどれくらいの速さで変わりますか?
  • ニュースの数字を見たとき、「誰が、何台を、いつからいつまで」数えたものかを確かめていますか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの?

米フロリダ州の A Better Bid は 2026 年 7 月 30 日、テスラの事故車についての自社データを発表しました。同社は 2006 年創業で、事故車を扱うオークションの Copart に、一般の買い手が参加できるようにする仲介会社です。

同社の記録では、出品に占めるテスラの割合が年々上がっています。

時期 出品に占めるテスラの割合
2026 年 1〜6 月 2.34%
2025 年 1.27%
2022 年 1.05%
2019 年 0.31%

同社はこの伸びを、2019 年から約 7 倍と表現しています。7 倍になったのは出品の割合で、落札額ではありません。

この話題は米 Forbes が 8 月 13 日に取り上げました。日本では Forbes JAPAN が 10 月 10 日に翻訳記事で紹介しています。

なぜ壊れた車に値段がつくの?

A Better Bid は、無事な電池モジュール、車を動かす駆動装置、再利用できる部品への需要が世界的に高まっているためだと説明しています。車を直して再生する業者や EV の専門業者は、こうした事故車を鉄くずではなく「宝の山」として扱っているそうです。

全損になったテスラが事故車オークションを通って再生業者や EV の専門業者に渡り、電池モジュール、駆動装置・電子部品、直して再び売る車になる流れの図
A Better Bid と Forbes の説明をもとに SYNCON が作図

車を 1 台の製品ではなく、高価な部品の束として見ると分かりやすいかもしれません。

同社の記録では、損傷の場所は前部が 367 台中 162 台で最も多く、後部が 75 台、側面が 32 台でした。テスラ以外の EV は、Rivian が 10 台、Polestar が 5 台、Lucid が 2 台と、ごくわずかです。

中古の EV 全体はどうなっているの?

iSeeCars は 2026 年 7 月 21 日、中古 EV の調査を発表しました。1〜5 年落ちの平均価格は 6 月に 3 万 3305 ドル(約 527 万円)で、前年同月比 7.4% の上昇です。同じ時期、1〜5 年落ちの中古車全体の平均は 3 万 2395 ドル(約 512 万円)で、1.3% 下がっています。いずれも売り出し価格の平均です。

前年より値上がりした中古車の上位 10 車種には、同社が調べたテスラの 4 車種がすべて入りました。

順位 車種 平均価格(2026 年 6 月) 前年比
1 位 Model X 6 万 950 ドル(約 964 万円) 17.5% 増
5 位 Model 3 2 万 8520 ドル(約 451 万円) 13.5% 増
7 位 Model S 5 万 2787 ドル(約 835 万円) 13.1% 増
9 位 Model Y 3 万 2916 ドル(約 521 万円) 12.0% 増

iSeeCars のアナリスト、カール・ブラウアー氏は、3 月のガソリン価格の上昇を理由に挙げています。高値が 1 か月ほど続いたあと、買い手が EV に戻ったという説明です。中古 EV の価格は、3 月には前年比 3.4% の下落でした。

ただし、長い目で見ると逆の数字もあります。iSeeCars の 8 月 11 日の調査では、3 年落ちの Model X は 2019 年より 17.0% 安くなりました。7 万 5554 ドル(約 1,195 万円)から 6 万 2689 ドル(約 992 万円)への下落です。同じ期間に、3 年落ちの中古車全体は 38.2% 上がっています。

参考までに、新車の平均取引価格は 2026 年 7 月に 4 万 9855 ドル(約 789 万円)でした。過去最高は 2025 年 12 月の 5 万 612 ドル(約 801 万円)です(Kelley Blue Book 調べ)。

※円換算は 1 ドル= 158.17 円(2026 年 10 月 9 日、三菱 UFJ 銀行の TTS・TTB の中間値)。

SYNCON の視点 — 車の値打ちを決めるものが、部品の側へ動いているのかもしれません

今回の話から見えるのは、高価な部品を積んだ製品ほど、壊れたあとの値段を部品が支えるという構図です。電池や駆動装置を外して使い回す市場が育つと、全損の車にも一定の値段がつきやすくなりそうです。

社用車や営業車に EV を検討している会社にとっては、売るときの値段や事故のときの扱いを考える材料になるかもしれません。一方で、これは米国の、しかも再生の業者が多い市場での話です。日本で同じことが起きるかは、部品を再利用する業者の厚みしだいでしょう。

もう 1 つは、値段の動きの速さです。ガソリン価格の上昇から 1 か月ほどで、中古 EV の値動きが変わったと分析されています。燃料や電気の値段は、仕入れや設備の判断にも思ったより早く効いてくるのかもしれません。

最後に、数字の読み方です。今回の事故車の数字は、1 社が約 7 年半に扱った 367 台(落札額があるのは 232 台)の記録です。同社自身も、全米の事故の起きやすさを測ったものではないと断っています。大きく見える数字ほど、誰が何を数えたのかを確かめておくと、判断を誤りにくくなりそうです。

未確認の点:電池パックの交換費用は、報道に数字がありますが出どころが示されていないため、本文に入れていません。日本の中古 EV や事故車の相場に同じ傾向があるかは、調べていません。

情報ソース:
・A Better Bid「The Tesla Salvage Boom — More Wrecks, Higher Prices Than the Rest of the Market」(PR Newswire、2026 年 7 月 30 日)
・iSeeCars「Tesla Leads a Sharp Rebound in Used EV Prices」(2026 年 7 月 21 日)
・iSeeCars「Used Cars Under $20,000 Are Getting Much Harder To Find」(2026 年 8 月 11 日)
・Kelley Blue Book / Cox Automotive「New-Vehicle Prices Trend Higher in July」(2026 年 8 月 11 日)
・Forbes「Used Teslas Are So Valuable Even Wrecked Models Now Command Top Dollar」(Jim Gorzelany、2026 年 8 月 13 日)
・Forbes JAPAN「テスラ中古車価格が異常高騰、事故車ですら170万円で売れる理由 米国」(2026 年 10 月 10 日)
・三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング「為替相場」(2026 年 10 月 9 日)

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