富士通の AI、活用率 9 割以上 — 「入れたのに使われない」を防ぐ

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富士通は、ほぼ全従業員にあたる約 10 万ライセンスの AI を社内に入れました。活用率は 9 割以上を保っています。

大事なのは、AI を入れることより、使われ続ける仕組みを導入の前から用意していたことです。

30 秒でわかるポイント

  • 7,500 から 3 万、10 万ライセンスへと段階的に広げた
  • 2026 年 6 月時点で、活用率は 90% 以上を維持
  • 研修、表彰、部門横断の推進役で「使われない」を防いだ

1 分でわかる解説

入れた AI は、Word や Teams、Outlook に組み込まれた Microsoft 365 Copilot です。いつもの仕事の道具の中にあるので、全社で使うほど効果が出る、と富士通は考えました。

ただし、数字は入口にすぎません。富士通は最初、投資の回収(ROI)の計算にこだわらず、早く使い始めることを選びました。そのうえで、利用と売上・利益のあいだに「途中の指標」を置いて、効果を見えるようにする試みを始めています。

段階 測るもの
入れた直後 どれだけの社員が使っているか
定着した後 使ったことで、仕事の何が変わったか

ここから考えたい 3 つの問い

  • 職場で入れた AI が「使われている」と言えるのは、どんな状態ですか?
  • AI の定着を、誰が自分の仕事として受け持っていますか?
  • 使えない事情のある人に、別の形で AI の恩恵を届けていますか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの? — 10 万ライセンスで活用率 9 割以上

富士通は、全従業員相当の約 10 万ライセンスの Microsoft 365 Copilot を導入しました。Microsoft が公開した導入事例によると、2026 年 6 月時点で活用率は 90% 以上を保っています。

一度に全員へ配ったわけではありません。3 つの段階を踏んでいます。

時期 ライセンス数 内容
2025 年 7 月 7,500 集中トライアル
2026 年 1 月 3 万 対象を拡大
2026 年 4 月 10 万 全社で本格導入

成果は個人の効率にとどまりません。社内の問い合わせ窓口(サービスデスク)では、年間約 30 万件の問い合わせの処理のうち、約 75% が自動化されたといいます。

どうやって「使われない」を防いだの?

土台にしたのは、社内の変革活動「フジトラ(Fujitsu Transformation)」です。経営層から現場まで全員が参加する取り組みです。その上に、部門をまたいで AI の活用を進める推進役を置きました。

中身は、大きく 3 つに分かれます。

施策 ねらい
ハンズオンセミナーとトレーニング動画 習熟度に合わせて学べるようにする
「AI & DDM Award」「鉄板エージェント コンテスト」 良い使い方を表彰し、社内に広げる
部門横断の推進体制 定着を特定の部署任せにしない

CEO 室で社内のデジタル変革を担う澤村俊祐氏は、単調な研修ではなく、より良い使い方が生まれる施策を意識したと話しています。社員が使い方を教わる側にとどまらず、良い使い方を見つけて持ち寄る側に回るわけです。

利用率は、何で測ればいいの?

導入事例では、活用率をどう数えているかまでは書かれていません。稟議で「利用率」を目標にするなら、何をもって「使った」とするかを先に決めておく必要があります。

富士通も、利用率だけを見ているわけではありません。Corporate Digital 本部の和田昌之本部長は、初期は重要な指標(KPI)を細かく決めずに活用を進めたと話しています。一方で、効果を見えるようにすることも重要だとしています。

そこで富士通は、自社の「因果分析」の技術を使っています。AI の導入と財務の成果のあいだに「途中の指標」を定め、それを KPI にして効果を見えるようにする試みです。

これまでの見方 これからの見方
何人が使っているか 使ったことで何が変わったか
導入前に投資の回収を細かく計算する 早く使い始め、途中の指標で価値を確かめる
情報システム部門が配って終わり 部門横断の推進役が定着まで受け持つ

澤村氏によると、トライアル中は ROI をどう設定するかを検討していました。経営層の後押しもあり、まずは早く導入し、使いながら価値を見極めることにしたそうです。

SYNCON の視点 — 数える前に、受け持つ人を決める

「導入したのに使われない」の多くは、ライセンスを配ったところで担当が終わることから起きます。富士通の例で目を引くのは、研修と表彰と推進体制を、全社展開より前のトライアルの段階で作っていたことです。

もう一つは、利用率の限界を自分たちで認めている点です。澤村氏は、顧客の環境やセキュリティ上の制約で Copilot を使えない社員もいると話しています。そうした社員にも、出社時にその週の出来事を把握できる AI の仕組みを届ける策を検討しているそうです。

稟議の段階で決めておきたいのは 3 つです。「使った」の定義。定着を受け持つ人。利用の先に置く途中の指標。この 3 つが決まっていれば、導入後に何を見ればよいかで迷いません。

要点まとめ

  • 富士通は全従業員相当の約 10 万ライセンスの Microsoft 365 Copilot を導入
  • 7,500、3 万、10 万と段階を踏み、2026 年 6 月時点で活用率 90% 以上
  • サービスデスクでは年間約 30 万件の問い合わせ処理のうち約 75% を自動化
  • 研修、表彰、部門横断の推進役を、トライアルの段階から用意
  • 初期は KPI を細かく決めず、利用と財務成果のあいだの途中の指標で効果を見る
  • 稟議では「使った」の定義、定着の受け持ち、途中の指標を先に決めておく

情報ソース:
・日本マイクロソフト「富士通、10 万ライセンスの Microsoft 365 Copilot を基盤に AI 前提の業務プロセス変革を推進」(2026 年 9 月 4 日)

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