AI の実力を、試験の点数ではなく「人の専門家なら何分かかる仕事をこなせるか」で測る物差しがあります。2026 年 1 月の測定では、上位の AI が人なら 320 分かかる仕事を、半分の確率でこなしました。
この物差しは、職場のどの作業を AI に任せ、どこから人が確かめるかを決める目安になります。
30 秒でわかるポイント
- 米国の研究団体 METR は、人が仕事を終える時間で AI の実力を測る
- Claude Opus 4.5 は、人なら 320 分の仕事を半分の確率でこなす
- こなせる仕事の長さは、2019 年以降およそ 7 か月ごとに倍になってきた
1 分でわかる解説
測り方は単純です。まず、その分野に詳しい人に作業をしてもらい、かかった時間を記録します。次に AI に同じ作業をさせ、成功する確率が 50% になる仕事の長さを求めます。
50% は「半分は失敗する」という意味です。成功率 80% で測る版もあります。基準を上げるほど、任せられる仕事は短くなります。
| 成功率の基準 | 読み方 | 職場での目安 |
|---|---|---|
| 50% | 半分は失敗する仕事の長さ | 下書きや試しの作業を任せる |
| 80% | 多くは成功する仕事の長さ | 人が最後に確かめる前提で任せる |
ここから考えたい 3 つの問い
- あなたの職場の作業は、人がやると何分かかるか、測ったことがありますか?
- AI が半分失敗しても困らない作業は、どれですか?
- AI に任せた作業を、誰がどの時点で確かめますか?
全文を読む(約 4 分)
何が起きたの? — 「何時間分」で測る物差し
日経クロステックが 10 月 9 日、用語の一つとして「タスク完了時間ホライズン」を取り上げました。
人の専門家がある仕事を終えるまでの時間を推定し、その仕事を AI がこなせるかどうかを見る指標です。ここでいう AI は、指示を待たずに自分で段取りを組んで作業を進める AI(AI エージェント)を指します。
この物差しを広めたのは、米国の研究団体 METR です。2025 年 3 月の論文では、当時の Claude 3.7 Sonnet が約 50 分の仕事を半分の確率でこなすと示しました。
METR は 2026 年 1 月に測り方を改め、新しい版(Time Horizon 1.1)を出しました。試す仕事の数を 170 から 228 に増やし、人なら 8 時間以上かかる長い仕事も 14 から 31 に増やしています。
| AI(開発元) | 半分の確率でこなせる仕事の長さ |
|---|---|
| Claude Opus 4.5(米 Anthropic) | 320 分 |
| GPT-5(米 OpenAI) | 214 分 |
| o3(米 OpenAI) | 121 分 |
いずれも 2026 年 1 月の発表時点の数字です。その後に出た AI は含みません。
点数で測るのと何が違うの?
これまで AI の実力は、試験の点数で語られることが多くありました。ただ、点数が上がっても、仕事で何ができるのかは分かりにくいままでした。
この物差しは、答えを「人の作業時間」で返します。使う仕事は、ソフトウエア開発や推論を何段階も重ねる作業です。成功の確率と仕事の長さの関係を線で結び、成功率が 50% になる点を読みます。
新人に仕事を任せるときと同じ考え方です。短い仕事は任せられても、何日もかかる仕事はまだ任せません。どこまでの長さなら任せられるかを、AI について数字で示したものです。
弱点もあります。8 時間以上の長い仕事 31 のうち、人が実際に時間を測ったのは 5 つだけです。残りは推定の時間で、METR 自身も幅がまだ大きいと認めています。
仕事や会社はどう変わるの?
伸びの速さが目を引きます。METR によると、こなせる仕事の長さは 2019 年から 2025 年まで、およそ 7 か月ごとに倍になりました。2024 年以降に絞ると、倍になる期間は 89 日です。
METR は、この傾向が続けば、10 年たたずに AI が多くの仕事をこなすとみています。人なら数日から数週間かかるソフトウエアの仕事です。ただし、結果が実際の仕事にも当てはまるなら、という条件付きです。
| これまで | これから | |
|---|---|---|
| AI を選ぶ基準 | 試験の点数 | 任せられる仕事の長さ |
| 任せ方 | 質問に答えさせる | 作業をまとめて渡す |
| 人の役目 | 答えを読む | 途中と最後を確かめる |
AI がこなせる仕事が長くなるほど、人が途中を見る機会は減ります。そのぶん、どこで確かめるかを先に決めておく必要が出てきます。
SYNCON の視点 — 任せる長さと確かめる場所
この物差しのよいところは、職場の言葉にそのまま置き換えられることです。「この AI は賢いか」ではなく、「人なら何分の作業を任せられるか」と問えます。
まず、職場の作業を「人がやると何分か」で並べてみることです。次に、作業ごとに許せる失敗の度合いを決めます。下書きなら半分の成功でも役に立ちます。お客様に出す書類なら、人が最後に必ず目を通す形にします。
もう一つは、見直しの時期を決めておくことです。こなせる仕事の長さが短い間隔で伸びているなら、任せる範囲も半年ほどで古くなります。誰が、いつ線を引き直すかを決めておくと、任せすぎも任せなさすぎも防げます。
要点まとめ
- タスク完了時間ホライズンは、人の専門家の作業時間で AI の実力を測る指標
- METR の 2026 年 1 月の測定で、Claude Opus 4.5 は人なら 320 分の仕事を半分の確率でこなす
- こなせる仕事の長さは、およそ 7 か月ごとに倍。2024 年以降に絞ると 89 日
- 使う仕事はソフトウエア開発や推論の作業で、長い仕事の多くは推定の時間
- 職場では、作業を「人なら何分か」で並べ、許せる失敗の度合いと確かめる人を決める
情報ソース:
・日経クロステック「タスク完了時間ホライズン(Task-Completion Time Horizon)」(2026 年 10 月 9 日)
・METR「Measuring AI Ability to Complete Long Tasks」(2025 年 3 月 19 日)
・METR「Time Horizon 1.1」(2026 年 1 月 29 日)
・arXiv「Measuring AI Ability to Complete Long Software Tasks」
・Wikipedia「METR」
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