AI を開発している会社が、自社の研究開発(R&D)のうち何割を AI に任せているかを、数字で公表した。Anthropic が 2026 年 9 月 17 日に出した報告によると、同社の AI 研究開発のうち 26% は、自社の AI である Claude が主導している。2026 年 2 月時点では 1% 未満だった。自社の業務のどの工程を、どれだけ AI に渡しているか。それを数字で言える会社は、いまどれだけあるか。
何が起きたか
報告は、社内の AI 研究開発を「AI がどこまで担っているか」で分類し、その割合を追ったものだ。2026 年 8 月時点で、Claude が主導していると判定された作業は全体の 26% だった。2026 年 2 月には 1% 未満で、半年あまりで四分の一を超えたことになる。あわせて、AI が「人と組んで大きな部分を担っている」以上の段階にある作業は、全体の 90% を超えた。
分類に使われているのは、Anthropic が自前で作った物差しではなく、研究機関 Epoch AI が 2026 年 6 月に公開した尺度である。自動化の度合い(Automation Level、AL)と呼ばれ、AL0 から AL5 までの六段階に分かれる。AL0 は「AI を使っておらず、何も足していない」状態。AL3 は「AI が人の細かな指示のもとで大きな塊を担う」、AL4 は「大まかな依頼から、AI が作業の大半を最後まで仕上げる」段階を指す。AL5 は人がほとんど関与しない完全な自動化で、今回の測定でこの段階に達した領域は無かった。26% という数字は、AL4 に分類された作業の割合である。
どう測ったのか — 特別な計測ツールは使っていない
数字そのものより、測り方のほうが他社にとって参考になる。Anthropic は、研究開発に関わる各部署から毎週 20% の社員を無作為に抜き出し、その一週間に何をしていたかを社内の連絡記録や文書から洗い出した。そうして集めた約 15,000 件の細かい作業を体系づけ、一件ずつ「AI がどこまで担ったか」を判定している。
やっていることは、要するに業務の棚卸しである。誰がどの工程にどれだけ手を動かし、そのうち何を AI に渡したか。新しい計測ツールを導入したわけではなく、すでに社内に残っている記録を読み直しただけだ。同社は別の報告で、社内のコードのうち 80% 超が Claude によって書かれていること、指示を受けて自分で作業を進める AI(エージェント)が社内におよそ 30,000 体動いていることも公表している。
ただし、Anthropic 自身が測り方の限界も書いている。作業の洗い出しも判定も Claude が行っているため、判定役が判定される側と同じ誤りをする可能性がある、という点だ。同社はこれを踏まえ、外部の評価者を社内に受け入れる計画だと述べている。自社を自社の道具で測ることの弱さを、数字と一緒に出している。ここは読み方として押さえておきたい。
日本企業への含意 — 測っていない会社は、次の予算を感触で決める
この報告が経営に効くのは、26% という水準そのものではない。AI 開発の最前線にいる会社でも四分の一だという事実と、そこに至るまでに「自社の業務を一件ずつ数え直した」という手順のほうだ。
多くの会社で、AI の議論は「どのツールを入れるか」「ライセンスを何人分買うか」で始まり、そこで止まっている。導入後に残るのは利用率くらいで、どの工程がどれだけ人の手から離れたかは誰も持っていない。契約更新の時期に「効果はあったのか」と問われて答えに詰まるのは、たいていこの空白のせいである。
測る手順自体は、規模の小さい会社でも真似できる。部署ごとに主要な工程を書き出し、各工程を「使っていない / 補助してもらう / 一緒にやる / AI が主導」の四段階で置く。判定の材料は、すでに社内にある議事録やチャットの記録で足りる。四半期ごとにやり直せば、割合の変化が見える。求めるべきは精度ではなく、同じ物差しで繰り返すことだ。
そのうえで、誰が測るかを決める必要がある。情報システム部門はツールの稼働状況を見られるが、業務の中身までは見えない。現場は中身を知っているが、自部署の話を過小にも過大にも申告する。Anthropic が各部署から無作為に社員を抜き出す方式をとったのは、この偏りを避けるためだと読める。社内でやるなら、測る役と測られる役を分けておくほうがいい。
SYNCON の視点 — 割合を言えるかどうかが、次の判断を分ける
AI を入れたかどうかは、もう差にならない。差になるのは、入れた結果として何がどれだけ人の手から離れたかを、数字で言えるかどうかである。言えない会社は、来期の予算も、人の配置も、外注の範囲も、感触で決めることになる。逆に割合が出ていれば、「この工程は AI が主導しているから増員はいらない」「ここは 1% も動いていないから、そもそもツールの問題ではない」という判断が立つ。同じ会議で、同じ資料を見ながら議論の質が変わる。
もう一つ、26% という数字が半年あまりで 1% 未満から動いたという点も重要だ。この種の割合は、一度測って終わりにすると意味を失う。測った時点の写真ではなく、変化の速さを見るための数字である。来週の経営会議で問うべきは、「AI をもっと使うべきか」ではなく、「うちの主要な工程のうち、いま何割が AI 主導になっているか。その数字を、誰が、どの頻度で出すか」ではないか。
要点まとめ
- Anthropic が 2026 年 9 月 17 日、自社の AI 研究開発のうち 26% を Claude が主導していると公表した。2026 年 8 月時点の測定で、2026 年 2 月には 1% 未満だった
- AI が人と組んで大きな部分を担う段階以上にある作業は、全体の 90% を超えた
- 物差しは研究機関 Epoch AI が 2026 年 6 月に公開した自動化の度合い(AL)。AL0 から AL5 までの六段階で、26% は AL4(AI が作業の大半を最後まで仕上げる)にあたる
- 測り方は業務の棚卸し。各部署から毎週 20% の社員を無作為に抜き出し、約 15,000 件の作業を一件ずつ判定した。材料は既存の社内記録
- Anthropic 自身が「判定役も自社の AI である」という限界を明記し、外部評価者の受け入れを予定している
- 自社でやるなら、工程ごとの四段階評価を四半期ごとに繰り返す。先に決めるのは、測る担当と頻度
情報ソース:
・Anthropic「Measurements for understanding the pace of AI development inside frontier labs」(2026 年 9 月 17 日)
・Epoch AI「Toward an O*NET for AI R&D」(2026 年 6 月 17 日)
・Anthropic「When AI builds itself」
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