提供元の技術者に入ってもらって作った業務用の AI は、2028 年までに企業の 7 割が手放す。米調査会社ガートナーが、そう予測しました。
原因は技術の出来ではなく、頼み方にあるとされます。完成後に社内の誰が面倒を見るかを、発注の前に決めておけるかが分かれ目です。
30 秒でわかるポイント
- ガートナーの予測では、2028 年までに企業の 70% が手放す
- 理由は、膨らむ費用と、自社だけでは育てていけないこと
- 対策は契約の前から。成果の責任者と終わり方を先に決める
1 分でわかる解説
対象は、AI の提供元の技術者が客先に入り、一緒に作って動かす方式です。英語の頭文字から FDE と呼ばれます。
ガートナーは、こうした案件は技術より先に、案件の組み立てでつまずくことが多いと指摘します。結果を分けるのは、次の 3 つの時点での判断です。
| 時点 | 決めること |
|---|---|
| 契約の前 | 成果に責任を持つ役員と、知識の引き継ぎ、終わり方 |
| 作っている間 | 提供元の技術者と組む、社内の担当者と使う人 |
| 引き継ぎのとき | 最初に決めた終わり方のとおりに終える |
社内に動かせる人がいないまま契約を延ばすと、費用だけが続きます。作る話と同じ重さで、引き継ぐ話を先にしておく必要があります。
ここから考えたい 3 つの問い
- 外の技術者に作ってもらった仕組みを、いま社内の誰が直せますか?
- 契約書に、知識の引き継ぎと終わり方は書かれていますか?
- 社内の準備が間に合わないとき、契約を延ばす以外の手を考えていますか?
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何が起きたの? — 7 割が手放すという予測
米調査会社ガートナーは 2026 年 9 月末、業務用の AI の作り方についての予測を公表しました。
対象は、指示を待たずに自分で段取りを組んで作業を進める AI(AI エージェント)です。なかでも、提供元の技術者が客先に入って作ったものを指しています。
| 項目 | 予測の内容 |
|---|---|
| いつまでに | 2028 年まで |
| どれだけ | 企業の 70% が手放す |
| 理由 | 費用が膨らむ。自社だけでは育てていけない |
| もう 1 つの予測 | 顧客から繰り返し出る要望が、提供元の製品本体の機能になる案件は 20% 未満 |
予測をまとめたのは、同社シニア ディレクター アナリストの Mukul Saha 氏です。こうした案件は、技術で失敗するより先に、組み立てで失敗することが多いと述べています。
つまり、AI の性能が足りないから手放すのではありません。頼み方と終わり方が決まっていないから続かない、という見立てです。
FDE って何? — 提供元の技術者が客先で作る方式
FDE は、フォワード・デプロイド・エンジニアリングの頭文字です。ガートナーは、提供元の技術者が顧客と直接組み、仕組みを作って動かすところまで担う方式だと説明しています。
工場に新しい設備を入れる場面に似ています。据え付けに来た技術者が帰ったあと、調整できる人が社内にいなければ、設備は使われなくなります。
ガートナーは、名前だけの FDE にも注意を促しています。導入支援やコンサルティングを FDE と呼んで売る例があるためです。同社はこれを「FDE ウォッシング」と呼んでいます。
中には、割高な料金に見合うだけの提供の深さや、進行を管理する力を持たない提供元もあるとしています。提案書に FDE と書かれていても、中身は確かめる必要があります。
頼む側は何を決めればいいの?
ガートナーは、結果は 3 つの時点での判断で決まるとしています。契約の前、作っている間、引き継ぎのときです。
| 時点 | ガートナーが挙げること |
|---|---|
| 契約の前 | 導入の予算ではなく、事業の成果に責任を持つ役員を決める。成果物、知識の引き継ぎ、知的財産の権利、終わり方を契約に書く。この方式が要る課題だけに使う |
| 作っている間 | 提供元の技術者を、社内の詳しい人や実際に使う人と組ませる。技術の出来だけでなく、運用の形も繰り返し確かめる。AI に任せる範囲と人が見る範囲を決める |
| 引き継ぎのとき | 最初に決めた終わり方を実行する。自社で動かし、育てていく力と責任の持ち主をそろえる |
この方式が要る課題とは、製品への深い知識、すばやい手直し、提供元の技術との密な連携が必要なものです。どの案件にも向く方式ではありません。
引き継ぎについて、ガートナーは延長を戒めています。社内の準備が遅れているからと契約を延ばすのではなく、最初の計画どおりに終えるべきだとしています。
システムづくりを外の会社に任せることが多い職場ほど、この予測は身近な話になります。作ってもらうことと、自分たちで持つことは、別の仕事だからです。
SYNCON の視点 — 引き継ぐ人を先に決める
この予測が示しているのは、AI の性能の話ではありません。誰のものとして作るかを決めないまま始めた仕事は続かない、という話です。
提供元の技術者がそばにいると、社内は安心します。その安心が、覚える人を置かない理由になりがちです。発注の前に決めておきたいのは、次の 3 点です。
- 完成後に面倒を見る社内の担当者を、部署名ではなく名前で決める
- その人が、作る段階から提供元の技術者と同席する時間を確保する
- 提供元の技術者が離れる日を、契約に書く
見積もりを比べるときは、作る費用に加えて、引き継ぎの手間も項目として出してもらうと判断しやすくなります。
担当者を決められないなら、まだ発注する段階ではないのかもしれません。見送ることも、1 つの判断です。
要点まとめ
- ガートナーは、提供元の技術者が客先で作った業務用の AI を、2028 年までに企業の 70% が手放すと予測
- 理由は、膨らむ費用と、自社だけでは育てていけないこと。技術より先に案件の組み立てでつまずく
- 結果を分けるのは、契約の前、作っている間、引き継ぎのときの 3 つの時点での判断
- 契約には、成果物、知識の引き継ぎ、知的財産の権利、終わり方を書く
- 導入支援やコンサルティングを FDE と呼んで売る「FDE ウォッシング」にも注意が要る
- 発注の前に、完成後に面倒を見る社内の担当者と、提供元が離れる日を決める
情報ソース:
・Digital Terminal「70% of Enterprises Could Abandon Vendor-Built Agentic AI by 2028, Gartner Predicts」(2026 年 10 月 5 日)
・Techstrong.ai「Gartner Warns 70% of Vendor-Built AI Agent Projects Face Abandonment by 2028」(2026 年 9 月 30 日)
・CX Today「AI Agents: OpenAI’s Big Bet vs. Gartner’s Warning Sign」(2026 年 10 月 5 日)
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