外注してきた業務システムを、AI を使って自分たちで作り、直す動きが同じ日に 3 つ報じられました。静岡県裾野市、服のレンタルのエアークローゼット、そしてデジタル庁です。
経営にとっての論点は、作れるかどうかより、作った後に誰が直し、誰が責任を持つかです。
30 秒でわかるポイント
- 裾野市は AI の開発道具「Claude Code」で内製を加速し、紙と手作業をなくす
- エアークローゼットは約 5 か月で約 790 件の変更を取り込み、事業側の社員も改修に参加
- デジタル庁は「源内」で、専門知識のない職員が AI を組み立てられる環境を試験提供
1 分でわかる解説
3 つに共通するのは、作る速さよりも、作った後の手入れまで自分たちで回す設計です。エアークローゼットでは、AI が書いたプログラムを AI が見直し、本番の障害の修復までほぼ人手を介さずに進めます。
ただし、どこまで任せられるかはシステムの性格で変わります。人に残る仕事も、事例ごとに違います。
| 事例 | 誰が作る | 人に残る仕事 |
|---|---|---|
| 裾野市 | 職員(庁内に専門のエンジニア職員はいない) | 業務の流れの見直し、属人化を防ぐこと |
| エアークローゼット | AI と、事業側の社員 | 仕様が正しいかの判断、外部とつなぐ部分 |
| デジタル庁 | 政府職員 | どの業務に AI を組み込むかを決めること |
ここから考えたい 3 つの問い
- 身近な職場のシステムで、外注先しか直せないものはいくつありますか?
- AI で作った仕組みを、作った人が異動した後は誰が直しますか?
- 止まっても困らないシステムと、止まると困るシステムを分けていますか?
全文を読む(約 5 分)
何が起きたの? — 自治体・企業・政府で同時に内製化
2026 年 10 月 6 日、日経クロステックが 3 つの内製化の事例を報じました。外注していた仕組みを、AI を使って自分たちで作る動きです。
| 事例 | 何をしているか |
|---|---|
| 静岡県裾野市 | AI の開発道具「Claude Code」で内製化を加速。手作業や紙をなくす |
| エアークローゼット | 社内の業務システムの開発と運用を、AI がほぼ自動でこなす仕組みを内製 |
| デジタル庁 | 政府の生成 AI 環境「源内」で、職員が AI エージェントを作れる環境を試験提供 |
裾野市は、業務の流れそのものを見直す取り組み(BPR)を徹底しながら内製化を進めています。内製化の課題だった学習の負担の重さと、属人化の克服にも挑んでいます。
裾野市の庁内には、専門のエンジニア職員がいません。それでも 6 月の報道では、クマの出没情報を地図で公開する仕組みを、検討を始めた当日に最初の版として公開しています。業務アプリを作れるクラウドサービス「kintone」と生成 AI を組み合わせた例です。
エアークローゼットでは、執行役員 CTO の辻亮佑氏が社内向けの開発基盤「cortex」の中身を公開しています。約 5 か月で取り込んだ変更は約 790 件、動いているアプリは執筆時点で 123 個です。
デジタル庁の「源内」は、同庁が外注せずに内製開発した生成 AI の利用環境です。2026 年度中に全府省庁の約 18 万人が使えるようにする予定で、2027 年度から本格利用を始めます。
AI で内製するって、どういう仕組み?
中心にあるのは、人が言葉で指示すると AI がプログラムを書く道具です。ここまでは多くの会社で試されています。違いが出るのは、その後の手入れです。
エアークローゼットでは、AI が書いたプログラムを別の AI が見直し、直し、本番に反映します。本番で障害が起きたときの修復まで、ほぼ人手を介さずに進めます。
その結果、事業側のマネージャーやプロジェクト管理の担当者も、変更の申請(プルリクエスト)を出せるようになりました。売上などの指標を並べた画面に列を足す、集計の条件を直すといった、既にある機能の改修です。
家にたとえると、外注は修理のたびに業者を呼ぶ家です。内製は工具を家に置き、住む人が小さな修理を自分で済ませる家です。ただし、柱や配線にあたる部分はプロに残します。
実際、同社でも外部のサービスとつなぐ新しい仕組みや、機密性の高い情報を扱う部分はエンジニアが担当しています。
仕事や会社はどう変わるの?
3 つの事例から見えるのは、小さな改修を現場の近くで済ませる形です。外注の見積もりと発注を待たずに、使う人が直せるようになります。
| これまで(外注中心) | これから(AI で内製) | |
|---|---|---|
| 小さな改修 | 見積もり・発注を経て外注先が直す | 社内で AI を使って直す |
| 仕組みの知識 | 外注先に残る | 社内に残る。ただし作った人に偏りやすい |
| 不具合の責任 | 契約で外注先と分け合う | 社内で持つ |
一方で、限界もはっきり書かれています。辻氏は、全自動で反映まで回せているのは社内向けの基盤であることが大きい、と述べています。消費者向けのサービスや、止まるとすぐ重大な影響が出る倉庫の管理システムでは、同じことはできないとしています。
もう一つの限界は、仕様の正しさです。AI の仕組みが守れるのはプログラムの正しさで、何を作るべきかが正しいかではありません。そこは引き続き人の責務だとしています。
源内の新しい環境も、まだ試験提供の段階です。政府の大規模実証の結果を踏まえて、本格利用に進む流れです。
SYNCON の視点 — 作る前に「直す人」を決める
AI で作れるようになると、作ることの重みは下がります。代わりに重くなるのは、作った後に直し続ける体制と、不具合が出たときの責任の置き場所です。
決めることは 3 つあります。1 つ目は、内製してよいシステムの線引きです。社内向けで止まっても業務が回るものから始め、顧客や取引に響くものは外注先や専門の担当に残す。エアークローゼットの線引きが、そのまま参考になります。
2 つ目は属人化への備えです。裾野市が課題として挙げているとおり、作った人しか分からない仕組みは、外注先しか分からない仕組みと同じ弱さを持ちます。3 つ目は、仕様が正しいかを誰が確かめるかです。ここは AI に任せられない仕事として、担当を名指しで決めておく必要があります。
要点まとめ
- 裾野市・エアークローゼット・デジタル庁が、AI を使った内製化の事例として同じ日に報じられた
- 裾野市は専門のエンジニア職員がいない中で、業務の見直しと内製化を同時に進める
- エアークローゼットは約 5 か月で約 790 件の変更を取り込み、事業側の社員も改修に参加
- デジタル庁は内製の「源内」で、職員が AI エージェントを作れる環境を試験提供。約 18 万人の利用を予定
- 限界は 2 つ。全自動は社内向けだから成り立つこと、仕様の正しさは人が確かめること
- 内製の前に、任せる範囲・直す人・仕様を確かめる人を決めておく
情報ソース:
・日経クロステック「裾野市が生成AIで内製化と業務改革、手作業や紙を撤廃」(2026 年 10 月 6 日)
・日経クロステック「エアークローゼット、AIで開発・運用を自動化 非技術者も自ら機能を追加」(2026 年 10 月 6 日)
・日経クロステック「ガバメントAI基盤「源内」、職員は専門知識不要でAIエージェント内製可能に」(2026 年 10 月 6 日)
・TechTarget ジャパン「エンジニア不在でも“即日システム構築” 裾野市のkintone×生成AI活用術」(2026 年 6 月 30 日)
・Zenn(エアークローゼット 辻亮佑)「AIのハーネスを徹底的に整えたら、レビューもシステム運用も自動化され、非エンジニアも開発に参加できるようになった話」(2026 年 5 月 12 日)
・デジタル庁「ガバメントAI「源内」」
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