食品メーカーの Umios(旧マルハニチロ)が、月々の販売計画づくりに AI の予測を取り入れました。全国の支社で手入力していた作業が、年間約 4,200 時間減る見込みです。
大事なのは、人の仕事が消えたことではありません。AI が「たたき台」を出し、人が点検して確定する分担に組み直したことです。
30 秒でわかるポイント
- 全国の支社の手入力をやめ、AI が販売計画のたたき台を出す
- 試験導入では、定番商品の年間の合計で予測精度 95%
- 支社の担当者が 10 日間で点検・修正し、最後は人が確定する
1 分でわかる解説
販売計画は、どの商品がどの倉庫でどれだけ売れるかを、月ごとに見込む数字です。生産計画や在庫の調整も、この数字に左右されます。
これまでは、担当者が長年の経験と勘で数字を入れていました。入力のやり方も、支社ごとにばらばらでした。
| これまで | これから | |
|---|---|---|
| 計画の数字 | 担当者が経験と勘で手入力 | AI が予測し、たたき台を出す |
| 入力のやり方 | 支社ごとにばらばら | 全国共通の入力画面、毎月 20 日に締め切り |
| 人の役目 | 数字を作る | 10 日間で点検・修正し、確定する |
人に残るのは、数字を打ち込む仕事ではありません。AI の出した数字を現場の目で確かめ、決める仕事です。
ここから考えたい 3 つの問い
- あなたの職場の計画の数字は、特定の人の経験に頼っていませんか?
- AI の予測と現場の感覚が食い違ったとき、どちらを採るか決めていますか?
- 部署ごとにやり方がばらばらな入力作業は、どれくらいありますか?
全文を読む(約 4 分)
何が起きたの? — 年間 4,200 時間の手入力
Umios は創業 146 年の食品メーカーです。2026 年 3 月に、マルハニチロから社名を変えました。冷凍食品を中心に、業務用と市販用の事業を持っています。
業務用流通事業部では、全国の支社の営業担当者が毎月、翌月以降の販売計画を手作業で入力していました。数字は商品ごと、倉庫ごとに入れます。
かかる時間は、全支社で年間約 4,200 時間です。計画を管理するシステム上のデータは約 470 万セルにのぼり、人手での管理は限界を迎えていました。
| 課題 | 中身 |
|---|---|
| やり方がそろわない | システムに入れる、独自の Excel で管理する、運用が止まっている。支社によって大きく 3 パターンに分かれていた |
| 人に頼る | 計画の数字が、担当者の長年の経験と勘で決まっていた |
| 先が遠い | 生産に反映するまでの時間があるため、2〜3 カ月先を当てる必要があった |
取り組みは、事業部とデジタル化を進める部署、グループのシステム会社、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の 4 社の体制で進めました。
どういう仕組み? — 予測が専門の AI
最初は、社内の対話型 AI「UmiChat」で予測を試しました。中身は Anthropic の「Claude Sonnet 4」です。
ただ、文章を作る AI に一度に予測させると、毎回同じ答えが出るとは限りません。システムに組み込むのも難しいことが分かりました。
そこで選んだのが「Chronos-2」です。過去の数字の並びから先を読む、予測が専門の AI(時系列基盤モデル)で、Amazon の研究部門が開発しました。比べてみると、UmiChat を上回る精度が出ました。
Chronos-2 は、数字を 1 つに言い切りません。下振れした場合、真ん中、多めに見た場合の 3 点を出します。天気予報が「晴れ」と言い切らず、降水確率で幅を示すのに近い考え方です。
事業部が「使える」と考える目安は、精度 60〜70% でした。試験導入では、定番商品の年間の合計で 95% の精度が出ています。
うまくいかなかった点もあります。毎年 2〜4 月に売れ行きの山が来る季節商品では、予測のずれが 62.57% ありました。初めは 1 年分の販売データしか使っていなかったためです。データを 3 年に広げ、「何月か」という情報を足すと、ずれは 20% まで下がりました。
在庫を減らすための安売りの数字は、学習から外しました。本当の需要とは違う動きだからです。
担当者の仕事はどう変わるの?
まず、入力をそろえました。社内で作った簡単な入力画面を全国で共通にし、毎月 20 日に締め切るルールを設けました。
AI の予測が出たら、支社の担当者が 10 日間の確認期間で点検・修正し、最終的に確定します。会社は AI を「ロジカルなたたき台」と位置づけています。
| これまで | これから | |
|---|---|---|
| 担当者の仕事 | 数字をゼロから入れる | AI の数字を点検し、直して確定する |
| 数字の根拠 | 担当者の経験と勘 | 過去の実績にもとづく予測と、現場の目 |
| ずれに気づく | 人が見比べる | 予測・計画・実績を並べ、ずれたら知らせる |
予測は毎日、最新の実績で更新されます。既存の分析画面に予測・計画・実績が並び、予測とずれると知らせが出ます。
人手が要る場面も残っています。商品の規格が変わると商品コードが切り替わり、販売の履歴が途切れます。現場では、新旧のコードを手作業でひも付けて対応しました。
今後は、予測の理由を言葉で説明する仕組みや、ずれが大きいときに打ち手を示す仕組みを入れる予定です。対象も、定番品からスポット品や新商品へ広げる計画です。
SYNCON の視点 — 数字を作る人から、数字を決める人へ
4,200 時間は、全商品に広げたときの見込みです。今は定番商品での試験導入の段階で、季節商品や新商品はこれからです。数字の大きさより、どう組み立てたかに目を向けたい事例です。
目を引くのは、AI を入れる前に入力のやり方を全国でそろえたことです。締め切りの日を決め、データの抜けとばらつきをなくしました。データがそろわなければ、どんな AI も先を読めません。
もう一つは、最後に決める人と、確認の期間をはっきり決めたことです。自社で同じことを考えるなら、AI の選定より先に決めることがあります。誰が数字を確定するか。何日で確かめるか。AI と現場の数字が割れたら、どちらを採るか。この 3 点です。
要点まとめ
- Umios(旧マルハニチロ)が、全国の支社で手入力していた販売計画に AI の予測を導入
- 業務用流通事業部の全支社で、年間約 4,200 時間の作業削減を見込む
- 対話型 AI ではなく、予測が専門の AI「Chronos-2」を選んだ
- 定番商品の年間の合計で予測精度 95%。季節商品はデータを足して、ずれを 62.57% から 20% に
- AI はたたき台。支社の担当者が 10 日間で点検・修正し、確定する
- 鍵は、入力のやり方を全国でそろえたことと、最後に決める人を決めたこと
情報ソース:
・@IT「「年4200時間の入力」「経験と勘」からの脱却 旧マルハニチロは「販売計画」をどう自動化した?」(2026 年 10 月 16 日)
・AWS ブログ「Umios(旧マルハニチロ) が時系列基盤モデル Chronos-2 で実現する販売計画 AI – 作業4,200時間削減への裏側」(2026 年 9 月 10 日)
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