野村不動産ホールディングスが、約 1 万人の社員に出す依頼の「催促」を AI に任せ始めました。先行検証では、依頼 1 回あたりの管理者の工数が平均約 62% 減ったそうです。
人に代わって仕事を進める AI は、マイクロソフトやサービスナウ、マネーフォワードも打ち出しています。選ぶときに見るのは賢さより、得意な持ち場と、いま使える段階かどうかです。
30 秒でわかるポイント
- 野村不動産 HD は PKSHA の AI で、未対応の人の追跡と催促を自動にした
- 約 240 人の先行検証で、依頼を受けた社員の 77% が抜け漏れの減少を実感
- マイクロソフトとサービスナウの新製品は、まだ限られた企業向けの試験提供
1 分でわかる解説
「AI 社員」は、記事を書いたビジネス+IT が便宜上使う呼び名です。各社に共通の製品名ではありません。
4 社は「誰の、どの仕事を取りに来るか」で持ち場が分かれます。提供の段階も違います。
| 会社と製品 | 得意な持ち場 | 提供の段階 |
|---|---|---|
| PKSHA「PKSHA AI依頼管理」 | 社内の問い合わせ、依頼、催促 | 約 1 万人の日常業務で実運用 |
| マイクロソフト「Autopilot」 | メールや文書を見渡す同僚役 | 限られた企業向けの試験提供 |
| サービスナウ「Flow」 | IT や人事、調達の申請の流れ | 限定の試験提供。日本での時期は未公表 |
| マネーフォワード「AI Cowork」 | 請求書発行や給与計算などの実務 | 4 月の発表時点で、7 月から提供予定 |
野村不動産の事例で効いたのは、社員が新しい画面を開かずに済む点です。仕組みは、ふだん使う社内チャットの中で動きます。
ここから考えたい 3 つの問い
- あなたの職場では、「誰がまだ終わっていないか」を追う仕事に、どれだけ時間を使っていますか?
- AI に任せたい仕事は、社内の依頼、経理の実務、IT の申請のどれに当たりますか?
- 試験提供の製品を待つか、いま動く製品で始めるか、誰が決めますか?
全文を読む(約 4 分)
何が起きたの? — 1 万人への依頼を AI が追いかける
野村不動産ホールディングス(以下、野村不動産 HD)は 2026 年 9 月 30 日、新しい仕組みの導入を発表しました。約 1 万人の社員に向けた「全社依頼」の業務に、PKSHA Technology(以下、PKSHA)の「PKSHA AI依頼管理」を入れたものです。
全社依頼とは、本社の部門が社員に出す手続きや作業のお願いです。これまでは Excel の名簿で対象者を管理していました。社内チャットの Microsoft Teams で 1 人ずつ連絡し、終わっていない人を手作業で追いかけ、何度も催促していました。
全社に広げる前に、6〜7 月に先行検証をしています。結果は次のとおりです。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象 | 4 つのテーマで約 240 人 |
| 管理者の工数 | 依頼 1 回あたり平均約 62% 減 |
| 依頼を受けた社員 | 77% が抜け漏れの減少を実感、86% が使い続けたいと回答 |
8 月には、Windows 11 の更新の依頼を約 1,000 人に配りました。9 月には約 1 万人規模で全社に配信しています。
AI は何を肩代わりしたの? — 「人待ち」の仕事
AI が引き受けたのは、文章を書く仕事ではありません。終わっていない人を探し、催促し、結果を集める仕事です。
グループ DX 戦略部(デジタル化を進める部署)の古澤智大氏は、「追跡とリマインドが自動で回るようになり、状況がリアルタイムで見える」と話しています。
大事なのは、社員の手順を変えていないことです。仕組みは、同社が毎日使う Teams の中で動きます。社員は新しい AI の画面を開く必要がありません。
同社は 2 月に、社内の問い合わせに答える「PKSHA AIヘルプデスク」も入れています。7 カ月後には、問い合わせの件数が 2.2 倍に増えました。一方で、人が対応する問い合わせは半分になったといいます。
4 社の AI は何が違うの?
ここ数か月、人に代わって仕事を進める AI の発表が続いています。ただし 4 社は同じ土俵にいるわけではありません。
| 会社 | 型 | 取りに来る仕事 |
|---|---|---|
| マイクロソフト | デジタル同僚型 | メールや Teams、文書を見渡し、同僚のように呼びかけて使う |
| サービスナウ | サービスデスク/ワークフロー型 | IT、人事、調達など部門をまたぐ申請や問い合わせの流れ |
| マネーフォワード | 専門職型 | 請求書発行、支払依頼、入金消込、給与計算 |
| PKSHA | 社内業務実行型 | 日本企業の社内の問い合わせ、依頼、催促 |
マイクロソフトは 9 月 25 日、AI 機能 Copilot を刷新しました。利用者がいない間も働く「Autopilot」を打ち出しています。サービスナウは 10 月 1 日、Teams や Slack での会話だけで IT の依頼を処理する「Flow」を公表しました。
導入の判断はどう変わるの? — 段階を見る
見落としやすいのが、各社の製品がどの段階にあるかです。発表された日と、自社で使える日は違います。
| 製品 | いまの段階(記事の時点) |
|---|---|
| Autopilot | 限られた企業向けの試験提供(プレビュー)から開始 |
| Flow | 限定の試験提供。誰でも契約できる一般提供は北米と欧州などで 2026 年 10〜12 月期。日本の時期は示されていない |
| AI Cowork | 4 月の発表時点で、7 月から提供予定として先行受付を開始 |
| PKSHA AI依頼管理 | 約 1 万人の日常業務で実運用 |
記事も、PKSHA の技術が世界の大手より優れているという意味ではない、と断っています。差がついているのは、日本の現場の、具体的な業務に入り込んでいるかどうかです。
SYNCON の視点 — 製品より先に「任せる仕事」を決める
4 社を比べる前に、自社の仕事を一つ選ぶことから始めるのが近道です。野村不動産 HD が選んだのは、全社依頼の催促でした。手順が決まっていて、量が多く、人が嫌がる仕事です。
任せる仕事が決まれば、製品は絞れます。社内の依頼なら PKSHA、経理や給与ならマネーフォワード、IT の申請ならサービスナウ、という具合です。マイクロソフトとサービスナウの新製品は、日本ではまだ待つ段階にあります。
もう一つの判断軸は、社員の手順を変えずに済むかです。新しい画面を覚えさせる仕組みは、全社に広げるほど手間が増えます。ふだんの連絡の場の中で動くかどうかを、最初に確かめておきたいところです。
要点まとめ
- 野村不動産 HD が、約 1 万人への全社依頼の催促を PKSHA の AI に任せた
- 約 240 人の先行検証で、依頼 1 回あたりの管理者の工数が平均約 62% 減
- 依頼を受けた社員の 77% が抜け漏れの減少を実感し、86% が継続を希望
- 4 社の AI は、同僚役、申請の流れ、経理の実務、社内の依頼と持ち場が違う
- マイクロソフトとサービスナウの新製品は試験提供の段階で、日本の時期は未定のものもある
- 製品選びの前に、任せる仕事と、社員の手順を変えずに済むかを決める
情報ソース:
・ビジネス+IT「野村不動産1万人の工数62%減、PKSHA・MicrosoftなどAI社員4社の違い」(2026 年 10 月 8 日)
・VOIX「野村不動産HD、PKSHA AIバックオフィスを活用した全社規模の依頼管理システムの導入」(PKSHA Technology の発表、2026 年 9 月 30 日)
AI・最新テックの動きを、毎日 X でお届けしています
X で @SYNCONJP をフォロー




コメント