X で話題になっていた投稿を SYNCON 編集部が深掘りします。ロボット会社 ugo の取締役 CSO、羽田卓生氏(@TakuoHada)が、BMW の人型ロボット導入について投稿しました。「一社の機体に賭けず、複数を試して知見を自社に残すのが、買う側の合理性だ」という指摘です。
新しい技術を「どの会社から買うか」で迷う職場に、そのまま使える進め方です。AI の導入にも当てはまります。
30 秒でわかるポイント
- BMW は米国工場で Figure 社の人型ロボットを試したあと、ドイツのライプツィヒ工場では Hexagon Robotics 社の「AEON」を試験導入しました
- AEON は脚ではなく車輪で動き、22 個のセンサーで周囲 360 度を捉えます。平らな工場の床では車輪が速く、省エネだとメーカーは説明しています
- BMW は同時に、工場で使う AI とロボットを評価する社内の専門組織を新設し、試した知見をそこに集めています
1 分でわかる解説
羽田氏の投稿が良いのは、ロボットの性能比べではなく「買う側の立ち回り」に目を向けた点です。BMW は 2 社の機体を、別々の工場で並行して試しています。
もう一つの指摘は「車輪型のほうが現場に早く入るのでは?」という問いです。見た目の先進さより、床と作業に合うかで選ぶ。この発想は、ロボットに限らず AI の道具選びにも効きます。
そして試した結果を、担当者ではなく社内の専門組織に残す。外部の会社を入れ替えても、知見は自社に積み上がります。
ここから考えたい 3 つの問い
- 新しい道具やサービスを、1 社に決めてから試していますか? それとも並べて比べていますか?
- 試した結果や失敗の記録は、担当者の手元ではなく組織に残っていますか?
- 道具を選ぶとき、目新しさより「自分たちの現場に合うか」で比べていますか?
全文を読む(約 4 分)
なぜ BMW は米国とは違うロボットを選んだの?
BMW は 2025 年、米サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場で、Figure AI 社の人型ロボット「Figure 02」を試しました。溶接の前に、板金の部品を取り出して置く作業です。
BMW の発表によると、10 カ月で X3 の 3 万台超の生産を補助しました。運んだ部品は 9 万個超、稼働は約 1,250 時間、歩いた歩数は約 120 万歩です。
次の舞台となったドイツのライプツィヒ工場では、スイス・チューリッヒの Hexagon Robotics 社の「AEON」を選びました。ドイツの生産現場に人型ロボットが入るのは、BMW で初めてです。
| 米国 スパータンバーグ工場 | ドイツ ライプツィヒ工場 | |
|---|---|---|
| 機体 | Figure AI「Figure 02」 | Hexagon Robotics「AEON」 |
| 移動 | 脚で歩く | 車輪で走る |
| 作業 | 溶接前の板金部品の取り出しと配置 | 高電圧バッテリーの組み立て、部品の生産 |
| 時期 | 2025 年に 10 カ月の試験 | 2025 年 12 月に初稼働、2026 年夏に試験運用へ本格移行 |
Figure 社との関係が切れたわけではありません。スパータンバーグでは後継機「Figure 03」が、より複雑な部品の順立てを担う予定です。BMW 自身は「一社に賭けない」とは書いていませんが、2 社を並行して試す構図は羽田氏の読みどおりです。
Hexagon 社は、精密な測定機器とソフトウェアで BMW と長く付き合ってきた会社でもあります。相手の強みを知っている会社と組む判断も見て取れます。
車輪型は現場に入るのが速いの?
AEON は身長 1.65 m、体重 60 kg です。脚の先が足ではなく車輪になっていて、最高で秒速 2.5 m で工場内を動きます。
22 個のセンサー(周りを映すカメラ、距離を測るセンサー、赤外線、マイクなど)で、周囲 360 度をその場で捉えます。自動車専門メディアの BMWBlog によると、電池は自分で 23 秒で交換します。センサーは移動だけでなく、品質の検査にも使えるとされています。
Hexagon Robotics の Arnaud Robert 社長は、複数の移動方式を試した結果、車輪がエネルギーと速さの両面で最も効率的だったと説明しています。工場の床はたいてい平らなので、速さを生かせるという理由です。
同氏は「私たちは踊るためのロボットではなく、働くためのロボットを作っている」とも語りました。羽田氏の「車輪型のほうが社会実装は速いのでは?」という問いに、メーカー側が答えている形です。
知見を自社に残す組織は何をするの?
BMW は、ライプツィヒの試験と同時に「生産向けフィジカル AI のセンター・オブ・コンピテンス」を新設しました。フィジカル AI とは、ロボットなど現実の機械を動かす AI のことです。
この組織には AI とロボットの専門家が集まります。役割は、技術パートナーの評価と、試験の構想から現場への導入までの担当です。
BMWBlog によると、この組織は箱から部品を取り出す 1 つの作業のために、約 2,000 回の実演を記録しました。ロボットに作業を覚えさせるためのデータです。こうしたデータと評価の経験は、機体を替えても BMW の手元に残ります。
今後は 2 台の AEON が 2 つの用途で同時に働き、年末までに両方が生産に入る見込みです。生産ネットワーク担当の Michael Nikolaides 上級副社長は「研究室から実際の生産への移行は、私の予想より速かった」と述べています。
SYNCON の視点 — 日本の非エンジニア経営層は何を盗むべきか
AI の導入でも、「どの会社のツールを買うか」で議論が止まる職場は少なくありません。BMW の進め方は 3 つに分けられます。並べて試す。現場の条件で選ぶ。評価と記録を社内の専任チームに集める。外部の会社は入れ替わっても、選ぶ力は自社に残ります。
中堅企業なら、専門組織まで作らなくても始められます。試している AI ツールを 2 つ並べ、同じ業務と同じ物差しで比べる。結果は担当者のメモではなく、共有の場所に残す。1 社の提案だけで決めないことが、次の導入を速くします。
要点まとめ
- BMW は米国で Figure 社、ドイツで Hexagon Robotics 社と、2 社の人型ロボットを並行して試しています
- 米国の Figure 02 は 10 カ月で X3 の 3 万台超の生産を補助しました
- ライプツィヒの AEON は車輪で動き、22 個のセンサーで周囲 360 度を捉えます
- メーカーは「平らな工場の床では車輪が最も効率的」と、現場に合わせた設計を説明しています
- BMW は評価と試験を担う社内の専門組織を新設し、知見を自社に集めています
- AI の導入でも「並べて試す・現場で選ぶ・記録を組織に残す」は、そのまま使える型です
情報ソース:
・BMW Group「First humanoid robot introduced in Plant Leipzig」(2026 年 9 月 21 日)
・Hexagon Robotics「BMW deploys AEON, Hexagon Robotics’ humanoid」(2026 年 2 月 27 日)
・BMWBlog「BMW Hexagon AEON humanoid robot Leipzig pilot」(2026 年 3 月 3 日)
・元投稿:羽田卓生氏(@TakuoHada)、2026 年 10 月 3 日
AI・最新テックの動きを、毎日 X でお届けしています
X で @SYNCONJP をフォロー



コメント