AI の成果は人数で測らない — オープンハウス 11 万 7000 時間の使い道

DEEP SYNC

オープンハウスグループは、物件資料づくりなどを AI で自動化し、全社で 11 万 7000 時間を浮かせました。

大事なのは、浮いた時間を客先に振り向けて売上につなげたことです。AI の成果は「何人が使ったか」ではなく、こうした「浮いた価値」で測る時期に来ています。

30 秒でわかるポイント

  • マッキンゼーは、多くの会社が AI の価値でなく利用の広がりを測っていると指摘
  • 元が取れるかは「今の作業の費用」と「AI でやる総費用」の比べ方で決まる
  • オープンハウスは 11 万 7000 時間を浮かせ、客先に出る時間に振り向けた

1 分でわかる解説

利用者数は、AI が配られたことを示すだけです。その仕事で費用が下がったのか、売上が増えたのかは分かりません。

マッキンゼーの「AI の価値曲線」は、仕事ごとに、今のやり方の費用と AI でやる場合の総費用を比べる考え方です。同じ使い方でも、元が取れる市場と取れない市場があるとしています。

測るもの 分かること 分からないこと
使った人の数 AI が社内に行き渡ったか お金になったか
浮いた時間と使い道 どの仕事で元が取れたか (使い道を決めないと価値にならない)

ここから考えたい 3 つの問い

  • 身近な職場では、AI の成果を何の数字で報告していますか?
  • AI で浮いた時間は、何に使うと決まっていますか?
  • いま AI を使っている仕事は、費用を比べて選んだものですか?
全文を読む(約 4 分)

何が起きたの? — 「使った人数」から「浮いた価値」へ

マッキンゼーは 2026 年 10 月、「AI の価値曲線」という考え方を公表しました。出発点は、多くの会社がいまだに AI の価値ではなく、利用の広がりを測っているという指摘です。

同じ時期に、ビジネス+IT がガートナーの講演を記事にしました。2026 年 8 月の「ガートナー デジタル・ワークプレース サミット」で、ディレクター兼アナリストの林 宏典氏が、AI サービスの選び方と成果の出し方を話したものです。

その中で成功例として紹介されたのが、次の 2 社です。

会社 AI に任せた仕事 結果
オープンハウスグループ 物件情報の収集、物件チラシの更新、物件資料の作成 全社で 11 万 7000 時間を効率化。路上でのチラシ配布など客先との接点に振り向けた
ウォルマート SNS などの動向から、製品デザインの候補をすぐに作る 商品企画にかかる期間を約半年から 6〜8 週間に短縮

オープンハウスは、浮いた時間を営業の現場に回したことで、案件と売上の増加につなげたと紹介されています。

「AI の価値曲線」って何?

ある仕事を今のやり方で続ける費用と、AI でやる場合の総費用を並べて比べるものです。比べる単位は「AI を入れたか」ではなく、一つひとつの仕事です。

マッキンゼーは、元が取れやすいのは、給料の高い専門的な仕事を AI で手助けする場面だとしています。単価の低い作業を大量に置き換えるより、効果が出やすいという見立てです。

一方で、同じ使い方でも、市場によって元が取れたり取れなかったりするとしています。他社の成功例をそのまま持ち込んでも、同じ結果になるとは限りません。

ガートナーの林氏は、選ぶ段階で見る観点を 6 つ挙げました。

観点 中身
機能 使える AI の種類、必要な技能、手軽に作れる度合い
既存の仕組みとの相性 社内の標準や、いまのシステムとつながるか
広げやすさ 他の仕組みとつなぐための規格に対応しているか
安全と管理 管理の機能や、外部のツールへの対応
支援 提供の形や言語、データの保管場所
契約 料金の仕組みと、使った分だけ払う料金の単価

林氏は特に、既存の仕組みとの相性を重く見ています。相性が悪いと自社のデータを生かしにくく、費用も増えるからです。

何を決めれば、元が取れるの?

ガートナーの調査では、全体の約 4 分の 3 の企業が、サービス選びを現場に任せています。社内の安全規定を満たすことが条件です。林氏は、これがサービスの乱立や運用の負担増につながりやすいと指摘しました。

料金にも注意が要ります。月額の定額から、使った分だけ払う形へ移りつつあり、請求額が急に増えたという相談が寄せられているそうです。画面を人の代わりに操作する AI(Computer Use)は、想定外の動きで AI の予算を短い期間で使い切るおそれがあるとも述べています。

これまで これから
成果の測り方 使った人の数 浮いた時間と、その使い道
選ぶ人 現場に任せきり 現場が選び、IT 部門が審査する
料金の見方 月額の定額 使った分だけ払う単価

マッキンゼーも、元が取れる仕事に投資を絞ること、費用を利用と一緒に管理すること、浮いた人手の振り向け先を考えることを求めています。

SYNCON の視点 — 浮いた時間の行き先を先に決める

オープンハウスの例で効いているのは、時間を浮かせたことより、浮いた時間で客先に出たことです。時間が浮いても使い道がなければ、売上も費用も変わりません。

林氏が勧めるのは、投じたお金に対する利益の割合(ROIC)を分解して眺める方法です。在庫や回収、粗利といった現場の目標の数字(KPI)まで枝分かれさせます。経営への効き目が大きい仕事から、AI を当てる場所を探すためです。

次に AI の報告を受けるときは、利用者数の横に「どの仕事で、何時間浮いて、それを何に使ったか」の欄を足すことから始められます。ただし、他社の数字は前提が違うため、そのまま目標にしないほうがよいでしょう。

要点まとめ

  • マッキンゼーは、多くの会社が AI の価値でなく利用の広がりを測っていると指摘
  • 「AI の価値曲線」は、今の費用と AI でやる総費用を仕事ごとに比べる考え方
  • 元が取れやすいのは、給料の高い専門的な仕事を手助けする場面
  • オープンハウスは 11 万 7000 時間を浮かせ、客先との接点に振り向けた
  • ガートナーは選ぶ観点を 6 つ挙げ、使った分だけ払う料金の急増に注意を促した

情報ソース:
・McKinsey「The AI value curve: The economics of applying AI to existing work」(2026 年 10 月)
・ビジネス+IT「ガートナー推奨「AIサービス選定6カ条」、オープンハウス「11万時間」削減の秘訣も」(2026 年 10 月 15 日)

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