全社で使う AI の料金、3 社に 1 社が予算超過 — 契約前に確かめること

DEEP SYNC

AI の利用料の年間予算を、3 社に 1 社が年の途中で使い切っていました。アクセンチュアが 17 か国の経営層 750 人に聞いた調査の結果です。

全社で契約する AI は、機能の比べ合いだけでは選べません。使うほど増える料金を誰がどう見るかを、契約の前に決めておく必要があります。

30 秒でわかるポイント

  • アクセンチュアの調査で、3 社に 1 社が AI の利用料の年間予算を超過
  • 利用料の約 8 割は、事業の成果との結びつきを数字で示せていない
  • ガートナーは、使用量の見積もりと部門ごとの上限を勧めている

1 分でわかる解説

全社で使う AI の料金は、人数分の定額だけではなくなっています。1 人いくらの定額から、やり取りのたびに課金される従量制まで、形が分かれています。

従量制の物差しが「トークン」です。AI が読み書きする文字の量を数える単位で、使うほど増えます。経営層は、今後 2 年で使用量が 78% 増えると見ています。

料金の形 予算の決まり方 契約前に確かめること
1 人いくらの定額 人数で決まる 定額に含まれる範囲
使った分だけの従量制 使い方で変わる 部門ごとの上限と、使用量を見る画面

アクセンチュアは、管理を整えれば今後 2 年のコストの増え方を最大 44% 抑えられると試算しています。

ここから考えたい 3 つの問い

  • 職場で使っている AI の料金は定額ですか? それとも使った分だけ増える形ですか?
  • AI の利用料がどの部門でいくら発生しているか、誰が見ていますか?
  • AI にかけた費用で何が良くなったか、数字で言えますか?
全文を読む(約 5 分)

何が起きたの? — 3 社に 1 社が予算を使い切った

アクセンチュアは 2026 年 9 月、AI の利用料についての調査を公表しました。日本を含む 17 か国の経営層 750 人が答えています。

調査でわかったこと 数字
年間の利用料の予算を、年の途中で使い切った企業 3 社に 1 社
事業の成果との結びつきを数字で示せていない利用料 約 8 割
今後 2 年で見込む使用量の伸び 78%
成果に対するコストを計算できている企業 35%
AI 予算のうち利用料にあてる割合(平均) 25%

調査に答えた企業が昨年払った利用料は、合計でおよそ 25 億ドル(約 3,956 億円)でした。単価は 19% 下がる見込みです。それでも総額は 36 億ドル(約 5,697 億円)に近づくと、同社は予測しています。

安くなった分を節約に回す企業は少数です。価格がさらに 25% 下がったらどうするかを聞くと、浮いた分を残すと答えたのは 20 人に 1 人でした。

トークンって何? — 使うほど増える料金の単位

トークンは、AI が読み書きする文字の量を数える単位です。AI の利用料は、多くの場合この量に応じて決まります。

電気料金に似ています。照明だけの月と、エアコンを回し続けた月では、同じ契約でも請求額が変わります。

全社で使う AI も、この形に近づいています。ガートナーは、業種や職種を問わず社員が日々の仕事で使う AI を「エンタープライズ AI アシスタント(EAIA)」と呼びます。

同社のアナリスト、ジェーソン・ウォン氏によると、この 1 年に企業が取り組んだ製品を聞いた調査では、86% が Microsoft 365 Copilot を挙げました。ただし同氏は「競争はまだ始まったばかり」とも話しています。

ガートナーは 2026 年 9 月、この分野で初めての市場評価を公表しました。最上位の「リーダー」は Anthropic、Google、Microsoft、OpenAI の 4 社です。

この評価を紹介した記事によると、ガートナーは料金について 3 つのことを勧めています。現実的な使用量を見積もること、費用の透明性を求めること、部門ごとに支出の上限を設けることです。

身近な例もあります。Microsoft の Copilot には、自分で段取りを組んで作業を進める AI(AI エージェント)の利用がメッセージ単位の従量制になる使い方があります。ガートナーの別のアナリストは、1 日 13 メッセージを 20 営業日使うと、フルライセンスの月額料金に相当すると説明しています。

契約と予算の持ち方はどう変わるの?

これまで これから
料金 人数分の定額 定額に、使った分が加わる
予算 年の初めに人数で決める 使用量を見ながら途中で見直す
費用の持ち主 情報システム部門がまとめて持つ 使った部門にひも付ける
選ぶ基準 機能の比較 機能に加えて、料金の見通しやすさ

アクセンチュアは、管理が進んだ企業の打ち手を 5 つ挙げています。

  • 導入前の見える化: 案件ごとに責任者、使う AI、コスト、見込む成果をつかむ
  • 使用責任の明確化: 使った部門やチームに費用をひも付ける
  • AI の使い分け: 仕事の内容に合わせて AI を選ぶ
  • 価値の事前定義: 導入の前に、成果とコスト、成功の指標を決める
  • 従業員教育: 仕事に合った AI の選び方を基準にして広める

実態はまだ追いついていません。利用料のうち、特定の利用者やチームまでたどれるのは 53% です。使った部門に費用を付け替える仕組み(チャージバック)を持つ企業は 7% にとどまります。

使い分けにも余地があります。同社が調べた 9,000 件を超える作業の 90% は、最も高性能な AI を必要としませんでした。一方で、AI への依頼の 54% は、必要以上に高性能な AI に送られていました。仕事に合わせて AI を振り分ける仕組みを入れている企業は 30% です。

同社は、こうした管理で今後 2 年のコストの増え方を最大 44% 抑えられる可能性があるとしています。成果との結びつきを示せる割合も 60% 高められるといいます。

注意点もあります。アクセンチュアは 7 月に、利用料の管理を助ける自社サービスを始めています。数字は、売り手の立場から出たものとして読む必要があります。

費用だけを見ることへの反論もあります。日本法人の常務執行役員、保科学世氏は、問うべきはコストの多い少ないではなく、AI で業務や事業がどう変わったかだと述べています。

SYNCON の視点 — 選ぶ前に、料金の見張り方を決める

AI の機能は短い間に入れ替わります。機能の比較表は、契約の更新までに古くなります。変わりにくいのは、料金の形と、それを見る社内の体制です。

契約の前に確かめたい項目は、次のとおりです。

  • 定額に何が含まれ、どこから使った分の課金になるか
  • 部門ごとの上限を、管理画面で設定できるか
  • 使用量を、部門や利用者の単位で見られるか
  • ほかの製品に移るとき、何が持ち出せなくなるか

予算は、年の初めに決めて終わりにはできません。使用量を定期的に見る担当を置き、上限に近づいたときの扱いを先に決めておきます。上限を低くしすぎれば、せっかくの AI が使われなくなります。

上限を超えたとき、止めるのか、追加を認めるのか。その判断を誰がするのか、決まっていますか?

要点まとめ

  • アクセンチュアの調査で、3 社に 1 社が AI の利用料の年間予算を年の途中で使い切った
  • 利用料の約 8 割は成果との結びつきを示せず、使用量は今後 2 年で 78% 増える見込み
  • 全社で使う AI の料金は、1 人いくらの定額から従量制まで形が分かれている
  • ガートナーは、使用量の見積もり、費用の透明性、部門ごとの上限を勧めている
  • 費用を部門に付け替える企業は 7%。管理を整えれば増え方を最大 44% 抑えられるとの試算
  • 契約の前に、上限を誰が見て、超えたときに誰が判断するかを決めておく

情報ソース:
・ビジネス+IT「Copilot・ChatGPT・Claude…全社AI選びの5条件、ガートナーが警告『課金の落とし穴』」(2026 年 10 月 13 日)
・Accenture「The CIO’s Guide to AI Tokenomics」(2026 年 9 月 10 日)
・VOIX「アクセンチュアが示すAIトークン支出の実態と事業成果の関連性の向上策」(2026 年 9 月 17 日)
・Softprom「Gartner Magic Quadrant for Enterprise AI Assistants 2026: Google and OpenAI Named Leaders, AWS a Challenger」(2026 年 9 月 18 日)
・ビジネス+IT「Microsoft Copilot『一律導入』はNG? 費用対効果バツグンの『ライセンス使い分け術』」(2026 年 8 月 10 日)
・Accenture Newsroom「Accenture Tokenomics Launched to Help Enterprises Manage AI Token Spend」(2026 年 7 月 29 日)
・円換算:欧州中央銀行(ECB)の参照レート(2026-10-09)

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